今朝、岩波文庫の『漱石詩注』を開きながらふと、そういえば亡くなった父が元気だった頃に漱石愛用の硯のひとつという小さな硯をいつも書斎の机上に置いて愛用していたことを思い出した。父は最期の頃は病気のためにもうまったく訳がわからなくなって字も書けなくなってしまっていたのだけれども。


漱石が大正五年八月二十二日に作った漢詩(七言律詩)の第一句は「香烟一しゅ(火偏に主)道心濃」。「一しゅ(火偏に主)」は訓読すれば「ひとくゆり」らしい。香りがひとつ立つことの意。くゆりって韻(ひび)きがいいなあと思う今朝です。