大辻隆弘氏の歌集『水廊』(1989年刊)より。


生卵カレーに落とし食ふわれをコンサバティーフと呼ぶ声しきり 大辻隆弘



生卵をカレーに落として食べるのは〈関西流〉という話を昔どこかで聞いたことがある。プロフィールによれば三重県生まれの大辻氏は京都で長く学生時代を送られているので、おそらくそうした流儀を自然と身に付けられていて、カレーをみんなで食す折りなどに普通に生卵をカレーに落として召し上がられるのだろう。この〈コンサバティーフ〉には、多少〈頑固〉のような味わいがあるかも。堅い信念のようにその思いを曲げられることなく、いつものそのやり方一筋で、生卵を落としたカレーを美味い美味いと召し上がられる姿が目に浮かんでくる。