らあらあとわが声徹りゆく森よ 応(いら)へなきゆゑ癒ゆるこころは 大辻隆弘



大辻さんの第1歌集『水廊』所収の一首。「らあらあ」のオノマトペと、「声徹りゆく」の「徹」の字がまず目を引く作品。誰もいない森に向かって「らあらあ」と叫ぶ作中主体。その声はすうっと徹って、戻ることなく深い森の奥に吸い込まれて行くのだが、とくべつ何も「応へなきゆゑ」、作中主体のこころはしずまってゆく。そういう一首。