短歌7首。



詞書〈アスフィータはその朝、広場のアイスクリーム売りに「今日は私、自分のスプーン持ってきたの、ほら、これよ」と自慢気に見せた。〉

西塔の辺りで大変になつてゐたが冷たいアイスを掬ふ飛行男爵家伝来の匙



アスフィータはその朝匙をポケットに忍ばせて門衛にニコッと笑ひぬ



西塔の辺りは匙の大捜索、その頃匙は掬つてをりアイスを



その匙はブルネグロ猫の親分の二枚舌からひとつ頂いたもの



嚔(くしやみ)してゐるであらうなその猫は。どこかは判らねども、月。



朝の頃に月が出てゐるといふからにきつとそこは夜なのであらう



舌ひとつ献上しただけなのだつたがと親分の一族に伝はる話