昨日の朝、仕事場に向かう道すがらの信号待ち中、交差点脇の電柱の「東京土建」の広告が目に入ってきて唐突に〈東京士官〉のことを思い出した。



東京田端の外れにある下宿屋の女将の愛犬が夏の暑い昼に死んで、夜、埋葬のために役所から連絡を受けた五人の東京士官たちが派遣されてやってきた。彼らは一様に青いスーツを着て、大きな青いバッグを提げていた。東京に出てきたばかりの「私」は東京士官のことを知らなかった。怪訝に思って「彼らは何者なんですか」と女将に訊ねると、女将は黙って奥から三ヶ月前の新聞記事を捜してきて私に手渡した。記事を読む私。懐中電灯で手元を照らしながら黙々と下宿屋の庭に穴を掘る五人。