昼休みに、栗木京子さんの第一評論集『名歌集探訪』(ながらみ書房)をぱらぱらと読む。この本は京都の三月書房から届いてまだ間もない本だ。読みたくてずっと探していたけれども、行くところ行くところの書店の書棚のどこにも出合う事がなく、気付いたらどこの大書店のHPにも「品切れ・重版未定・取り寄せ不可」と表示されていた。縁がないとはこういうことだと、やや寂しく思っていたところに、たまたま覘いた京都の三月書房のホームページの在庫書籍リストの中に見つけた。嬉しくなって早速取り寄せた。その中の一節である。(p98-99)


***以下、引用部分***


 (前略)
 「君」の出てくる歌を調べようとしたとき、真っ先に思い浮かんだのが次の一首であった。


 きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり


 永田和宏の第一歌集『メビウスの地平』の歌である。(後略)


***以上、引用部分***


 栗木さんがこの歌についてどのように批評されているかはこの本の眼目のひとつで重要だけれども、私は、そのこと以上に、別段初めて見るわけではない、むしろ数え切れないぐらいに目にしてきたはずの永田先生のこの有名な歌の、とくに下句「海へのバスに揺られていたり」に引き付けられてしまった。「揺られていたり」の揺れ具合がじつに心地よい。栗木さんは


この歌を口ずさんでいたら、『メビウスの地平』を読み返してみたくなった。


と書かれていますが、私もいま、そんな気分です。