大手ハウスメーカー、オー〇ンハウスに建売住宅を強めに営業され、勧誘されました。
首都圏郊外の新築分譲で、物件価格は、土地所有権込で3200万でした。
【物件の概要】
土地面積:82平米
建物面積:78平米
建物構造:木造
間取り :1LDK+2S
土地権利:所有権
用途地域:準工業地域
駐車場 :有
相場からすれば間違いなく安く、首都圏でのマイホーム願望がある方なら一考の余地はあるかもしれません。
しかし、少なくとも、単身世帯にとっては無用の長物どころか負債になる買い物です。
断りづらい性格が災いして結構精神的に追い詰められたのですが、最終的には全力で購入を断り、人生が終わらずにすみました。
私は今、家賃5.8万(共益費込み)の賃貸アパートに住んでいます。
仮に住宅ローンをフルで契約してしまったとした場合、人生における資産形成にはどのような差が生まれるのか、安易に営業マンの話を聞いてしまった反省の意味を込めて、改めてシミュレートしてみます。
【プランA:安い賃貸物件に住み続け、かつ29年間オルカン積立をした場合】
まず、現在の家賃+共益費は5.8万で、2年に一度更新料9.5万がかかります。
24か月で割ると約0.4万です。
さらに、将来的な家賃の上昇も加味し、6.4万として計算します。
①家賃+共益費:6.4万×12か月×29年=2227万
次に、安い賃貸物件で浮いた資金を投資信託、具体的にはオルカンに回すものとします。
平均利回りは年率5%の想定とします。
オルカンの期待年利は一般に6%とされることが多い印象ですので、控え目な想定だと思います。
オルカンには月4万投資するものとします。
4万の根拠としては、住宅購入した場合、ローン返済および固定資産税や保険等で毎月10.5万ほどはかかる見込みなので、家賃6.4万との平均差額が概ねそのくらいになると思われるためです。
②投資元本:月4万×12か月×29年=1392万
③運用収益:2346万
④総資産 :3728万
上記をまとめると、29年後時点では、
・支出総額(①+②) :3619万
・収益総額(③) :2346万
・利益率(収益総額/支出総額):約64.8%
となります。
29年後の総資産は、④の通り、3728万円で暫定運用益となります。
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【プランB:3500万の住宅ローンを組み、29年後に売却した場合】
次に、借入総額3500万(フルローン)で住宅を購入した場合について考えます。
元利均等払いで、35年ローン、ボーナス返済はなしとします。
金利種類は変動金利とし、最初の13年間は0.8%、以降は1.0%とします。
(金利上昇が叫ばれているので、少し甘めな計算かもしれません)
借入総額 :3500万
返済総額 :4068万
①ローン返済総額(最初の13年間):9.56万円×12か月×13年=1491万
②ローン返済総額(14年目~29年目):9.76万円×12か月×16年=1874万
③最初の13年間の住宅ローン控除計:250万
※住宅ローン控除はほぼフルに使える想定で計算します。
④固定資産税計 :17万×29年=493万
⑤修繕費用 :200万
⑥地震・火災保険:240万
⑦29年支出総額(①+②+④+⑤+⑥-③):4048万
⑧29年後残債(返済総額4068万-①-②):703万
次に、売却時の価格については、以下の想定で考えます。
首都圏郊外という立地のため、土地価格は微増し続けるというやや楽観的な見込みです。
⑨土地価格 :2800万
⑩建物価格 :200万 ※木造、耐用年数22年ではこんなところでしょうか。
⑪仲介手数料:100万
⑫売却手取り(⑨+⑩-⑪):2900万
29年後の総資産は、収益総額(⑫-⑧)の通り、2197万円で確定益となります。
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最終的な純資産で比較するのが明瞭でしょう。
プランAとプランBを比較すると、総資産額では、賃貸+オルカンの方がおよそ1500万円上回りました。
さらにいえば、これはあくまで29年後の断面でしかありません。
まさかオルカンを29年後に全額売却して引き出すわけではないでしょうから、
実際にはその後20年程度は運用し続けるわけです。
オルカンの運用益は伸び続ける一方で、不動産の売却益はその時点で確定益となり、複利効果が発生しませんから、その差は時が経てば経つほどさらに拡大していきます。
しかも、『賃貸+オルカン』の方が資産流動性が高く、自由な選択肢を持ち続けることが可能です。
天災による資産価値の減少リスクもありませんし、周辺環境の変化に伴う資産価値の下落リスクとも無縁です。
オルカンはまさに最強クラスの分散投資であり、資産形成だけで見れば、住宅購入に比べ、ローリスクハイリターンと言えます。
何より、ただ自動的に積立放置してればいいだけという圧倒的お手軽さ。
不動産と異なり、考慮すべき変数が少ないため、精神的なストレスもかかりません。
「家賃にかけるお金がもったいないから家を買った方が良い」という営業トークは間違いで、「高い住居費のせいでインデックス投資に回す資金が減る方こそもったいない」が揺るぎない事実です。
もはやインデックス投資で憂慮すべきは証券口座のセキュリティの問題くらいでしょう。
結論として、少なくとも単身世帯で資産形成を軸に考えるのであれば、どう考えても、住居を購入すべきではありません。
安い賃貸物件に住み、浮いた資金でインデックス投資をとにかく長期間運用することが、もっとも人生において選択肢が広く、もっともローリスクハイリターンな選択だと、自信を持って断言できます。