昨日開かれた、「戦争法案廃案に向けて  法学者と学生・市民のつどい」に参加してきましたのでその感想をアップします。

 

戦争法案について、どこが問題か、廃案に追い込むにはどんな闘いが求められているか、などについて憲法学、国際法学、刑事法学の各法学者が短い時間ながら話すという企画でした。

 

印象に残った話としては、
◆財界は戦争法案を全面的に支持する立場ではあるものの、①黙っていても政権が積極的に推し進めてくれるので、90年代のように要求レポートを出さない、②TPP早期妥結と原発再稼働、労働法制改革の方は政権が消極的になるかもしれないから強く主張する、という姿勢をとっている(渡辺)
→財界が戦争法案については表立った動きを見せていないという指摘は良い注目点と思う。昨年、渡辺教授が「大国への執念」で示した財界への分析には感銘を受けたのだが、ここらへんの話は聞いていて面白い。と同時に、惨事(=戦争法案推進)便乗型政策へのチェックが緩くなるので、自分含め、世論注目が戦争法案に一極集中していることの危険性を考えないといけない。

 

◆廃案に向けた運動を考察する時に、①地方の反対運動の拡大、②自公内部に亀裂、③学生が立ち上がった、④女性が立ち上がった、というこれまでにない4つの力が生まれている(渡辺)
→我々若い世代としては過去との比較を切に実感することは難しいものの、②について、国政レベルで民主主義が踏みにじられているが、首相一強のもとで(自民)党内民主主義が機能しているとも考えることはできない。

実際に地方議会では戦争法案に反対若しくは慎重な議論を求める自民議員が存在している。中央ではなかなか離反が難しいが、このように強引に推し進めている以上、党内にも水面下において何らかの負担がかかっていると考えるのが自然。

それは、例えば支持率がこのまま下降街道を突っ走ったり、もっと明確的(理想的)には、戦争法案が成立失敗となった時に、「安倍おろし」みたいに表面化してくるかもしれない。
公明だって、そもそも支持母体の抵抗・慎重論を強行突破しての暴挙なんだから、反動が起きても全然不思議ではない。

 

◆これまでなかなかできなかった運動団体間の共同がいま実現できた(渡辺)
→民主、共産、維新、社民という政党が共同で反対演説することなんか見たことがないと渡辺教授が発言したが、それだけもともとに無理がある法案なんだろうと思う。
疑問なのは、運動団体間でなぜ今まで共同することがなかったのかということ。あと、いわゆる左翼団体って仲が悪いということが言われるけど、それはどうして?

 

◆戦争法案が成立しても、運用面への歯止めとして機能するから、反対運動の効用は決してAll or Nothingではない(渡辺)
→運動をするにあたって私に欠けていたかもしれない精神を与えてくれました。副次的効果を念頭において運動するか否かというのは重要だと思う。「戦争法案成立後、自民党はいよいよ明文改憲に乗り出してくると思う」と浦田教授が言っていて、これは考えたくないシナリオだが、今の運動はそれに抗う土台を継承できる道筋ともなる。
その他としては、昨年7月の憲法解釈の変更が立憲主義に反するという批判がされるが、解釈改憲は今までにも何度か行われており、そのことをどう考えるか、また自衛隊の存在をどう捉えるかという問題が私には結構重いと思った(前からだけど)。前者について聞かれたら、解釈改憲を全否定しないと答えるつもりなんだけど、具体的な線引きが曖昧。後者については更に厄介で、自衛隊違憲論に立った時の説明が難しいし、かといって自衛隊合憲論は無理があるんじゃないかと思う。
成立した場合の違憲訴訟の可能性については、下級審では違憲判決が出るだろうが、おそらく最高裁は統治行為論で逃げるだろうと浦田教授が話していた(もしそうであれば最高裁は最低裁)。
推進派が主張する、唯一にして最大の立法事実である安全保障環境の変容に対する国際情勢の視座に立った反論のひとつとして、中国が日本に侵攻することはない、なぜなら経済的に抑止力が働いているから、とばかり言われるが、これ以外の説明方法はないのかと前から思っているところ。

 

プログラム見たら、戦争法案について語られる場なのに、刑事法学者(新倉教授)がいたので、ちょっと期待というか、楽しみにしてたけど、何言ってるか全然わかんなかった(°_°)

 

全体的感想としては、成立後の話、運動の話は私の視野を広げてくれた様に思います。
渡辺教授の話が一番ためになりました。2時間20分だったので、時間が許されていれば、もっと突っ込んだ話が聞けるかなとは思いました。