恥ずかしながら私は立憲主義を理解していないし、今まできちんと学習してきたわけではないので、勉強中です。その中で憲法擁護尊重義務について疑問が出てきました。
「憲法擁護尊重義務は国民にもある」という学説があることは驚きに値しないですし、戦後直後はどうやら以下に揚げる説が現在よりも有力だったようですが、実際どう反駁すればよいのかわかりません。「近代史の教訓から権力の暴走を防ぐ」というのは、いまだ片面的な説明にとどまっている様に思え、十分には腑に落ちません。
「為政者・公務員ならず国民にも憲法擁護尊重義務が課されると仮定した場合、具体的にどのような不利益が考えられますか」? 国民に義務が課されるとした場合、国民は憲法を批判したり、民間レベルでの改正提案もできないという性質になるのでしょうか。
そもそも「擁護尊重」とは、どのように定義されるのでしょうか。義務主体について、また作為的義務違反と不作為的義務違反という観点でも論述しているものはないでしょうか。
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『註解日本国憲法 下』
「(第99条が)国民をあげていないことは、国民のこの憲法を遵守する義務を否定したのでないことは、言を俟たない。殊更に国民をあげなかったのは、公務員が直接に憲法の運用に接触するため、それらに憲法を尊重し擁護することを求める特別の理由があるのみならず、この憲法自体が、前文で明言するごとく日本国民が確定したものである、従って、制定者であり、主権者である国民が、国家の根本法たる憲法を尊重し擁護しなければならないことは、理の当然であって、自ら最高法規として定立したものを、制定者自身が、破壊することを予想するのは、自殺的行為といわねばならないであろう」と。
佐藤幸治
「憲法制定者である国民が憲法を尊重擁護すべき立場にあるのは当然のことで、99条はその当然の前提に立つと解するのが一般的であるといえよう。じっさい外国の憲法の中には、国民の憲法遵守義務を明示するものも少なくない」
百地章
「現行憲法の採択が審議された帝国議会で、憲法担当国務大臣の金森徳次郎氏は、次のように述べている。「日本国民がこの憲法を守るべきは理の当然でありまして、ただこの第95条(*現行の第99条)は、憲法という組織法的な一般的な考えに従いまして、権力者または権力者に近い資格を有する者が憲法を濫用して、人民の自由を侵害する、こういう伝統的な思想をいくぶん踏襲いたしまして95条の規定ができております。国民が国法に遵(したが)うということはいうまでもないことでありまする」
要するに、憲法の尊重擁護義務は、ふだん権力を行使する立場にある公務員などを「特別に」対象にしたものであって、国民が憲法を守るべきは「理の当然」だから、条文の中に入れなかったというだけのことなのである。
世界の憲法をみると、多くの憲法に国民の憲法遵守義務が定められている。たとえばイタリアの憲法には、以下の規定がある。「すべての市民は、共和国に対して忠実であり、憲法及び法律を遵守する義務を負う」
『あたらしい憲法のはなし』
みなさんも日本國民のひとりです。そうすれば、この憲法は、みなさんのつくったものです。みなさんは、じぶんでつくったものを、大事になさるでしょう。こんどの憲法は、みなさんをふくめた國民ぜんたいのつくったものであり、國でいちばん大事な規則であるとするならば、みなさんは、國民のひとりとして、しっかりとこの憲法を守ってゆかなければなりません。
憲法で基本的人権というりっぱな強い権利を與えられました。(中略)こんなりっぱな権利を與えられましたからには、みなさんは、じぶんでしっかりとこれを守って、失わないようにしてゆかなければなりません。