私は滅多に人を褒めません。
プライドが高くて相手のことを簡単には認めないので褒めない、というわけではなく、褒めるということは難しい行動と思っています。

難しいと感じる理由は二つあり、まず一つ目としては、人は長所よりも短所の方がどうしても目につきやすいからです。Appleのロゴは完全なリンゴの形をしていません。右側が欠けており、そこに人々の視線を向かわせるという効果を狙ったものになっているんですね。できるところよりもできないところの方に目がいきがちなのは人の残念な習性です。

 

人を褒めるとき、その内容は、「絶対的な長所」か「その人が変化したところ」のどちらかになります。

「絶対的な長所」とは、明らかに周囲よりも優れているというもので、例えばわかりやすく言えば東大医学部医学科に在籍している、などです。

「その人が変化したところ」とは、例えば半年前に30分かかっていたことが10分でできるようになった、など、その人が以前よりも成長したというものです。

絶対的な長所はそうそうあるものではないので、基本的には変化したところ、成長したところを褒めることになりますが、それには普段から人をよく見ている必要があります。これはそんなに簡単なことではありません (私はかつて会社で後輩のフォローをしていたことがありますが、彼とは月1程度でしか会っていなかったので、結構難しさがありました)

二つ目の理由としては、下手な褒め言葉は意味がないからです。
例えば、高校生に対して「(英語の)現在完了形が理解できてて凄いね」とか、「三平方の定理の基本問題が解けて凄いね」などといったらどうでしょうか?バカにされているなと相手は思うことでしょう。相手からすればできて当たり前のことを言っても響きません。
これはさすがに極端な話だったかもしれませんが、とりわけ初対面のとき、相手のことをよく見ないまま表面的に褒めるケースがあると思います。距離を縮めたいと思っての社交辞令なのでしょうけども、意味がない、酷い場合だと逆効果になると思います。特に私は見え透いたお世辞は言うのも言われるのも苦手なのです。

では、そのような問題をクリアしたとして、相手のどのようなところを褒めたらいいのか、という話ですが、
・相手が意識している、自覚しているところを褒める
・相手が気づいていない良さを褒める
という二種類が(当たり前ですが)あります。
大前提、絶対的な正解はありません。ですが、どちらの方がいいのか、というのは言えるんじゃないかなと思っています。

 

相手との関係が浅い状態、あまり信頼関係ができていない段階ならば、相手が自覚しているところを褒めた方がいいと思います。「私のことをちゃんと見てくれているな」と思ってもらえるはずで、逆に、相手が気づいていないところを褒めても、「えー、そうかなあ?そんなことないと思うけどな。たぶん社交辞令だろう」と、響かないケースが多いと思います。

「何を言うか」は当然大事ですが、「誰が言うか?」も大事です。それなりに信頼関係の土台があれば、本人の意外な長所を褒めても受け止めてもらえるんじゃないかなと思っています。

 

そうはいっても、「そうかなあ?」とか「そんなことないですよ」という謙遜の反応をされる方が自然です。そのとき、表面で言っていると思われないためには、一歩も引かずゴリ押しの褒め姿勢を貫く必要があります。これも難易度が高いんじゃないかなと思うんですよね。

ということで、褒めるとは難しいなという話でした。褒め上手な方は凄いです。