下図の局面。▲77角が珍しい手である。
ここで△62銀が自然なようで不用意だった。
すかさず▲86角と上がられ、△64歩と突くことができない。これで陣形の発展性を奪われると、指す手が非常に難しいのである。この筋は対中飛車ではよく出てくる居飛車のテクニックだ。しかもこの場合、単なる睨み倒しにとどまらず、▲45桂の攻めの権利は残っている。
△62銀に替えて△64歩がよく、それでも▲86角なら△42角として受かる。
▲86角以下、△15歩、▲77銀と進む。▲77銀とはなかなか意図がわかりづらいのだが、ここで△56歩、▲同歩、△同飛と交換した。▲55歩で飛車が捕まるので自信がなかったが、もはやこれしか手が見えなかった。
ここは言うまでもなく重要なところなので解析してみる。
仮に▲55歩と封鎖してきた場合、△35歩、▲26飛、△55銀の進行が考えられる。
ここで私の第一感としては▲45銀で後手ダメに見えるのだが、△58飛成、▲同金に、△42角とぶつけ、水匠の評価値としては意外にも全くの互角である!
もう一つ、△55銀に対して▲57金もあるが、これは△46銀、▲56金、△37銀不成、▲27飛、△36歩と進み、これは後手500点ほど。
とはいえ、アマ低段ではこの後どう指せば良いかはなかなか理解が追いつかないところでもある。
△55銀に対して最善手は飛車の捕獲に拘らない▲57銀!だというから驚く。以下、△36飛、▲同飛、△同歩、▲45桂、△42角。これで先手200点ほど。
手順自体は初段あれば全員20秒以内には読める変化だが、形勢判断は非常に難解。突き詰めればこれが最善なのかもしれないが、ソフトの見解を見てもなお、私は▲45銀を選択すると思う。最善手というのは常に一定、というわけではない。棋力や棋風によって変わってくる。
さて、先手の六段はそんなことを喝破していたのかは知らないが、△56同飛に対し、僅か12秒で▲45桂と跳ねてきた。
ここからの先手の指し方が鮮やかすぎたので、示しておきたい。
△22角、▲24歩、△同歩、▲23歩!△13角、▲16歩。
手にした1歩を2筋に使うのが全く読んでいなかった手段で、1筋攻めが間に合うと自信満々に主張する指し方には良い意味でふてぶてしさを感じる。
以下、△51飛と引き上げるが、▲15歩、△33桂、▲同桂成、△同銀、▲14歩、△31角に、▲13歩成があまりにもぴったりとなった。
これでと金攻めが確定。最後の▲13歩成が成立するのをうっかりしていた。
戻って、△51飛で、②△52飛はどうか?
▲15歩に△23金として受けようとするものだが、▲54歩がぴったりした攻めで、やはり振りほどくことはできない。
また、替えて③△54飛はどうか?▲15歩に△64歩と角筋を遮断して粘ろうというものだ。
以下、▲14歩、△31角、▲24飛と走り、やはり先手優勢。とはいえ、3つの中では最もマシ目に見える。
この手順は部分的な定跡として覚えておいた方が良いものかもしれない。それくらい鮮やかであった。
本譜、▲13歩成以降は全く勝負どころがなかったため、省略する。
【まとめ】
・▲77角には、△64歩が無難。
・▲86角型で、5筋交換に対して▲24歩、△同歩、▲23歩の反撃筋を覚えておく。