日本には古くから
**「しらす(知らす)」と「うしはく」**という言葉があります。
この「しらす」という言葉は単に「知る」という意味ではなく、
国をどのように治めるかという考え方を表す言葉です。
その源は、日本神話の有名な場面、天孫降臨にあります。
太陽神である 天照大神 は、
孫の 瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)に
地上の国を任せる際、こう告げます。
「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国は、これ吾(わ)が子孫の王たるべき地なり。皇孫(こうそん)よ、往(ゆ)きて治(し)らせ。」
この「治らせ(しらせ)」という言葉が、
「しらす」という統治の考え方のもとになったとされています。
この神話は古代の歴史書日本書紀 に記されています。
「しらす」とは何か
「しらす」は現代語で説明すると、
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国の状態をよく知る
-
人々の暮らしを知る
-
全体の調和を保つ
という意味を持つ言葉です。
つまり
力で支配するというより、
全体を見渡しながら調和を保つ統治
という考え方です。
うしはく国との違い
古い言葉にはもう一つ
**「うしはく」**という言葉があります。
これは
-
自分の所有物として支配する
-
土地や民を私物のように扱う
という意味です。
簡単に言うと
| 「しらす」 | 公として状態をよく知り、調和を保ちながら治める |
| 「うしはく」 | 私有して支配する |
日本の理想とされたのは
「うしはく国」ではなく「しらす国」でした。
日本の統治思想は、
天皇が国を「所有して支配する王」ではなく、
国の状態を知り、調和を保つ存在
それが「しらす国」という考え方。
支配ではなく調和。
所有ではなく公。
天孫降臨の言葉の中には、
そんな日本独特の統治観が
表現されているのかもしれません。