エストニアの電子国民システム、スウェーデンのマイクロチップ決済をはじめ、様々な中国のデジタルサービスの事例が豊富で、世界のデジタルサービスのスピードの速さを痛感します。
ここで、紹介されている中国のデジタルサービスの一部を紹介しましょう。
中国人の意識を変えた?【ジーマ・クレジット】
アリババ傘下の「アント・フィナンシャル」のサービスで、アリペイの機能の1つ。アリペイの決済データ(支払い能力や返済履歴)からユーザーの信用スコアを算出し、点数が高いと住宅やレンタカーなどの提携サービスで優遇特典が受けられる仕組みです。個人の社会的信用にも繋がり、本では「これにより、中国人のマナーが上がった」と説明しています。
国民性に合ったデジタルサービス?【ディディ】
ウーバーのような配車アプリですが、タクシーの種類がランクに分かれています。ランクが上がるほど価格が高くなり、ドライバーの給与も向上します。ディディとウーバーの違いは、ディディはユーザー満足度をデータで測定する点。筆者曰く「ウーバーのように、ドライバーと乗客の相互評価の場合、中国では賄賂が横行するはず」ということです。ディディがそれを意識しているかどうかは分かりませんが、社会の特性に合ったサービスを提供できているのでしょう。
オンラインとオフラインの融合【平安保険グループ】
医師の情報を見た上で病院予約などができるアプリサービス。ユーザーの行動データが保険営業員に通知されるので、潜在顧客とコミュニケーションを取る際に役立ちます。オンラインがオフラインを淘汰するのではなく、オンラインがオフラインをより効果的にする事例と言えるでしょう。
「広告を打って、商品が売れて終わり」ではなく、ユーザーの生活の一部として寄り添い続けるサービスが、デジタル時代にあるべきビジネスの形なのです。
ビフォアデジタル・アフターデジタルとは
オフラインが中心で、オンラインが付加価値である世界を「ビフォアデジタル」、オフラインとオンラインが逆転し、オンラインの状態から時々オフラインで接点がある状態を「アフターデジタル」と定義しています。
そして、アフターデジタルの時代において成功する企業の思考法として、オフラインとオンラインの境がなくなり融合する「OMO (Online Merges with Offline, Online-Merge-Offline)」という概念が紹介されています。
日本ではまだビフォアデジタルの考え方が主流で「サービスにデジタル戦略を取り入れる場合は」という思考になりがちだそうですが、ご紹介したような中国のデジタルサービスでは、もはやオフライン・オンラインという境目はなく、オフラインとオンラインによって一貫したユーザー体験(UX)を提供しているのです。
参考:UXの5段階
段階0 (2006~2008年):UX=ビジュアルデザインやUI
段階1 (2009~2010年):「ペネトレーション」デザイン・ビジネス・テクノロジーを包括するデザインシンキング
段階2 (2012~2015年):「ディフュージョン」デジタル化することでユーザー体験を設計する
段階3 (2015~2017年):「エボリューション」デジタルがオフラインと繋がることで、新たな価値を生む (EC×スーパー×デリバリーなど)
段階4 (2015~2017年):「データドリブン」第3段階でたまったデータを元にシステムを創造する
段階5 (2015~2017年):「ホリスティック・エクスペリエンス」プロダクトに携わる属性ごとに満足度を点数化し、サービスの健全性を図る
