激動の毎日ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。


明るいニュースは、やっぱり少ないですな。


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少年審判に限らず、家裁の仕事は、世間のニーズが意外と高いというのに「わかっている」人が少ないです。

前にも書きましたが、わたしは関係者の多くに苦手意識があると思っています。

いい表現でいうと、専門的な仕事だ…と無意識的に思われている…。


ま、わるく言うと、バカにされている。


少年の仕事についていた頃は、年がら年じゅう世間の無理解に怒っていました。

しかし、こういった事態にただ怒っているだけというのは、易しいことであります。

そういった中で、局面の打開を図るというのは、難しい…。


「わかってねえ奴が多すぎる」と思うんだったら、「わかってる人」をなんとか見つけなくては…


でも、見つからなかったら?


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N君の審判の日を迎えました。


「…というわけで、さっきの質問の答は、なかなか出ないみたいだから、休廷して、よく考えてくるかい?」

N君はふてくされた顔で、ちょっとこっちを見ました。

「じゃ、休廷します。さっきの部屋で、よく考えてきなさい。」

押送の職員が立ち上がり、N君を連れて行きます。

審判廷には、自分のほかに、

 担当調査官

 付添人弁護士

 両親

 書記官

が残りました。

調査官が、ご両親と付添人弁護士を控え室に案内しようとします。


「あ、ちょっと先生…進行についてご相談が」

美人で独身の付添人弁護士には審判廷に残ってもらいました。


「先日、弁護士会で少年事件のビデオ作ったでしょう?」

「ああ…はい」

「あのパッケージの写真に先生が写っていませんでしたか?」

付添人弁護士は、ちょっとのけぞってこっちを見ました。 「顔は写ってなかったのに…」

「わかる」

「ど、どうして…」

「ふくらはぎでわかる」


付添人弁護士は、言葉を失い、固まりました。


「で、相談なんですけど、先生、○○○○行ったことありますか?」関西弁調査官が空席を確保した有名な委託先の名前を挙げました。

「いえ…名前は聞いたことあります…が…」

「ぶっちゃけたところ…先生」身を乗り出します。「N君を○○○○に預けるとした場合、ちゃんと会いに行って、向こうの管理者とも連絡を取り合いながら面倒みていただける?」

「え」 付添人弁護士は固まったまま口をモゴモゴさせました。 「えっと」

「やっぱり忙しいかなぁ…無理かなぁ」

「い、いや」

「向こうにお願いする以上、付添人にもちゃんとみてもらえないと、実効性がないかもしれないなぁ」

「し、試験観察ってことですよね? それって調査官が…」

「よく調査官まかせにしちゃって、付添人がなにもしてくれなくなると…」

「い、行きます、行きます」 付添人弁護士は笑いだしました。そして女性調査官に向かって言いました。 「こんなぶっちゃけトーク、ありなの…?」

女性調査官は「ジェイさん、一体どこ見てるんだか」と応じました。

「じゃ、N君入れますよ」

再開のため、先に両親に審判廷に入ってもらいます。



書記官は受話器を取り上げ、「N君お願いします」と言いました。