「あっK先生!」
「あっ裁判官」
「こんなところでナンですけど、異動になりました。○○地裁○○支部です。お世話になりました。」
「ああ…ご栄転おめでとうございます。」
「今日は挨拶回りです。廊下でこんな挨拶になってしまってすいません。」
「いや~ れーかちゃんの付添人、まだまだがんばります。」
「もう、会いに行かれましたか?」
「もちろん」
「忙しいのにすいません。」
「いやいや…ジェイさんがいなくなるんで、その分がんばりますよ。」
「あの…先生…ひとつ前から聞きたかったことがあるんですが」
「なんですか?」
「K先生は…もともと…学校の先生かなにかされていたんですか?」
「えっ?」
「もと教壇に立たれていたとか…」
「どうしてですか?」
「いや…少年友の会の方の中でも、K先生の付添人活動は素晴らしかったから…前にそういう子どもと関わるお仕事に就かれていたんじゃないかと…」
「まさか!」
K先生は笑いました。
「わたしは会社を経営しております。教師はまるで畑違いです。」
「えーーーっ!」
「会社の方は、最近、せがれが頑張ってやってくれているんで、こうやってまぁ裁判所のこともお手伝いさせてもらえているわけで…」
「そーだったんですか?!」
「少年事件のことなんか、正直、よくわかってないんです。」
「信じられない…教育のプロだとばかり…」
「そんな…裁判官にそう言われるとくすぐったい」
K先生は「しろうとですいませんでした、お世話になりました」と言って一礼されました。
あっそうか!
また気付きました。
K先生がいう「しろうと」としての感覚こそ、れーかちゃんに響いたか…