「被告人を懲役3年に処する」


…法廷劇でおなじみの判決シーンですが、少年審判ではそのような言渡しはしないです。


「少年を3年間少年院に収容する」


なんて言渡しはしないんです。


審判廷での決定告知では、単に「少年を中等少年院に送致する」といった言い方をします。何年収容されるのか、成人の刑事公判のようにハッキリとは言わないんです。




では、クイズです。


法律上、犯罪を犯した未成年者が家裁の審判で少年院送致の決定を受けた場合、いつまで少年院に収容されることになっているでしょうか?




こりゃ、まあ、感覚的に考えてみてですね、未成年者を対象にした施設なんだから…大人になるまで? なんて考えたりする人もいるんじゃないかと思いますが…


一応、それ、正解です。





原則として、少年が少年院に収容される期間は、その少年が成人に達するまでです。大人になると、少年院には居られなくなるのが原則…です。


実際の運用は、こういった法律上の収容期間を前提に、細かく収容期間が分類されているんです(いわゆる「一般短期」とか「長期」、「比較的長期」…と呼ばれている収容期間)が、これはあくまで運用上の基準であって、たしか法律が定めた基準ではないです。なので、ちょっと措いておきます。



永遠に少年気分でいたい大人が増えているって、ちょっと前に言われたもんですが、そうであっても、少年院を出されちゃうわけですな。



それはまー、あくまで未成年者を対象にした制度だから、そうなのね…と納得できそうな気もします。


ただちょっと困った事態があり得ます。




そのひとつは、少年が、たまたま少年院送致の決定があった翌日が誕生日で、成人になってしまう…なんて場合です。


少年院に収容される期間は…たった1日?




そういった事態に備えて、少年院法は、少年院送致の決定を受けてから成人に達するまで1年に満たない少年の場合(つまり19歳で少年院送致の決定を受けた少年の場合)、誕生日がきて成人になっても引き続き収容され、1年は少年院で矯正教育を受けるということにしています。


19歳になってから少年院送致の決定を受けたら、例外的に20歳になっても少年院に居る…ということになります。


たしか、少年院法上、これも「収容」を「継続」するという言い方したんじゃなかったかな?


でも、ここでの収容継続は、家裁の審判はありません。






もうひとつの困った事態…


それは、






20歳になるまで少年院に収容されても、少年が更生してなかったら?








…困りますよねぇ。


きっと多くの人がそういったこと懸念しているんでしょうねぇ…。




「そういう時は、成人になったからっていって少年院から出さずに、もっと少年院の矯正教育を受けさせたらどお?」





大人だったら、あり得ない話です。


いったん裁判所で「懲役3年」という判決が確定したら、それを勝手に「3年6月」とか「4年」に延ばすことはできません。



しかし…


少年の場合、改めて家裁が審判をすれば、成人になっても引き続き少年院に収容することができることになっているのです。


収容継続審判と呼ばれています。




たぶん、あまり知られていない審判だろうと思うのですが…




全国で報道された超有名な少年事件で、医療少年院に送致された少年が、その後成人になってしばらくしてから社会復帰した…といった話題がありました。


その親御さんが、医療少年院に収容された子どもに面会に行っていた経緯を手記にして、それが新聞等で報道されたことがありましたが、そこで、収容継続審判を受けていたことも紹介されていました。




社会的に耳目を集めた事件でなくても、収容継続審判はかなりの頻度で行われています。


少年審判を担当する裁判官にとって、収継は割とよくある手続といえます。


少年には、矯正教育の効果がある程度みえている…そうであっても、収容継続審判を行うことだってあります。




そういう言い方すると、家裁の少年の手続って、しつこいですね。


刑事訴訟の手続では、およそあり得ない話です。