昔ドリフの番組で少年少女合唱団ってコーナーがありました。


面白かったですねあれ。



少年少女っていうと、男の子と女の子って並べ方になりますが、「少年」という概念で男の子と女の子をくくってしまう用法もあります。


この用法では、男の子と女の子を少年男子と少年女子と呼び分けます。



で、少年審判の話ですが、


女の子も、来ます。


その時に少女審判とはいわないですな。やっぱり少年審判です。少年女子審判とも言わない。



最初ちょっと違和感ありました。すぐに慣れましたが。





    ※    ※    ※





その女の子(つまり少年女子)は、最初、万引の在宅事件で来ました。


どおってことのない短い審判でした。ほとんど印象に残らなかったですね。


女の子は中学2年生。


保護者は母親だけが審判に来ました。離婚してその女の子と2人暮らしということでした。


調査官の報告(少年調査票)には、その女の子に深夜徘徊がみられることが気がかりだとありましたが、審判では、その女の子が「万引をしない、夜遊びしない、学校に行く」と約束して、不処分となりました。


「また来るかもしれないな」


わたしは思いました。


「でも、今まで簡易送致で不開始にしたのが1件だけだったし、今回はこんなところで仕方がないよな」




そして、半年後。



家出中の女子中学生をつかまえたので、ぐ犯送致したいという連絡が警察から入りました。


観護措置の手続をすると…


「あ! 君か…」


それは半年前に不処分にした女の子でした。


調査官に調査命令を出します。


「顔は覚えてるけど、審判での印象はとっても薄いです」と調査官に話しました。


「そんな悪い子には見えなかったけど、家出しちゃったんだね…」



2週間後…


担当の調査官から相談されました。


調 「身柄の新件で来たぐ犯の女の子のことなんですけど…」


裁 「あーはいはい」


調 「保護観察で帰しちゃっていいですか?」


裁 「え? なんですかいきなり…」


調 「なにも言わずに帰していいと言ってください」


裁 「なんでですか? まだ来てから間もないじゃないですか。審判はまだ2週間も先だし…」


調 「裁判官、前件で会ってるんでしょう?」


裁 「まあ審判やったってだけですけど」


調 「いい子でしょう?」


裁 「え? ん~ あんまり印象残ってないんですよねぇ~」


調 「いい子なんですよ」


裁 「 …そうすか」


調 「なにも言わずに帰していいと言ってください」


裁 「はぁ…」


調 「んもー どうしよー…」


裁 「帰していい!!」


調 「あらっ?」


裁 「どうしましたか?」


調 「わたしの悩みも知らないで、どうしてそんなに軽々しく帰していいなんて言うんですか?」


裁 「まったくもーどうしたんですか? あっちで笑っている人がいるじゃないですか。一体なんですか悩みって?」


調 「それがですね…」




調査官が話した内容の概略は次のとおりです。


 * * * *

少年(女の子のことです)の母親は、数年前に昔付き合ったモト彼とひょんなことからよりを戻して不倫関係になり少年の父親と離婚した。


少年はそのような真相を知らずに母親と暮らしていたが、母親はそのモト彼と熱心に交際を続け、ついに中学生になった少年が知るところとなった。


少年は、母親にそのモト彼と付き合わないで欲しいと思っているが、母親は少年のそのような思いを理解していない。


そのため少年は反発して夜遊びしたり小さな万引を繰り返している。


 * * * *



「なんか、いかにもって感じの話ですね~」わたしは言いました。「少年としては、自分の思いをお母さんにあまり話せないのかな?」


「いや、それがですねぇ」と調査官。「わたしからみてあの子すっごくしっかりしてるんですよ。言うんですズバリ。『お母さんわたしあの人嫌いだから付き合って欲しくない』って。」


「調査官、もうお母さんに会ったんですか?」


「はい昨日。だから今こうして相談に来てるんです。」


「…続けてください」


「母親のモト彼っていう人は奥さんがいるらしいんですよ。でも母親にとっても優しいんですって。奥さんと別れるってささやいてくれるんだそうです。」


「だそうですって、それ、少年から聞いたんですか? それとも昨日…」


「昨日、母親から聞きました」


「 … 」


「もう、お母さん、青春まっただ中なんですよ。焼けぼっくいに火が付くなんでもんじゃないんです。帰りは毎日午前様で、そのモト彼を連れて来ちゃったりして、うちに泊めたりなんかしてあげちゃって、で、少年にも紹介しちゃうんです。『ママ、この人と結婚するから…』」


「 … 」


「でも、前件で裁判官が審判した後、少年の要望に応えて母親が男と別れるって約束したそうなんです。」


「へー」


「そしたら、母親、無断外泊で何日も家に帰らなくなっちゃったらしいんです。」


「ほんとなのそれ?」


「頭に来た少年が家出すると、一週間ぶりぐらいに母親が様子を見に帰って、少年がいないのに気付いて家出人捜索願を出したと…そういう顛末なんですよ」


「 … 」


「少年どーしましょーかー?」


「 … 」


「わたしの悩み、少しはわかってくれましたか?」


「 … 」


「自宅に帰していいですか?」


「 … 」


「もー何も言わずに帰していいって言ってくださいっ!!」


「ま、まぁ考えさせてくださいよ…」




    ※    ※    ※




本当は、母親の言動に焦点を当てたかったのですが、そこに行く前に話が長くなっちゃったので、もう寝ます。


あ、書きたかったのはですね、この後のお母さんの言動から、お母さんのすごい思い込みをひとつ発見したんです。そのこと書こうと思ったんですが、前振りが長すぎた…すいません。あの調査官、面白い人だったよなとか、余計なこと思い出したりしたもんで。


おやすみなさい。