『新しい見慣れた季節』(070909)
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『新しい見慣れた季節』
先週末からここ数日 珍しく電話がよくかかってきたりかけたりした
日頃の付き合いが悪すぎるせいで 久々に関係を持つ人ばかり
街の片隅でずっと操業休止していた工場が動き出したみたいに
いや お昼休みを迎えたオフィス街のランチタイムみたいに
まるで僕が眠っている間に なにかの合図があったみたいだ
近況を全然知らせていないお互いばかりだったから
話したいことや 話さなきゃいけないことが多すぎて
僕たちは どんどん口から言葉が溢れだして 洪水と海
数十秒で話題がすぐに変わるし ぎこちないミックスジュースみたい
短い時間の電話で すごくたくさんの言葉が飛び交った
でも それだけたくさん話をした気がするけれど
本当に 話したかったことは ひとつも話せていないんだよね
「きみと話す時はいつもそうなんだ
肝心なことは何ひとつ伝えられていない」
———実は これまで
そんな風にずっと思っていた けど 最近は違った
駅からの帰り道
まだ本調子でないスズムシが誘う初秋の夜空を見上げたら
そこにある月がとてもきれいで
いつか見た時と同じように輝いていて
別に何も言えなくてもいいんだって思った
だって 今夜は誰だってこんなに美しい月の光の下にいるんだもの
つながってるじゃん
何も言わなくても
僕は本当はいつも
ただそんなことを言いたいだけなのかもしれないや
外では月明かりの下
最後のセミが弱々しく小さな声で鳴いている
そっと
秋に気づかれないように...