そんなある日・・・・
一本の電話が鳴った。
ヨシノリの組織の若い奴からだった。
刑務所でヨシノリが亡くなったと言う知らせだった。
死因は心不全ということだった。
突然すぎる知らせを、受け入れる事ができないまま
急いで病院へ向かった。
病院に着くと、検死が終わった直後で
しばらく、待ってくださいと言われた。
待っている間、ヨシノリと出会った時からの事が
色々と思い出されてきたのと、
刑務所という最悪の場所で人生を終えたヨシノリを思うと
ポロポロ涙が出てきた。
かなりの時間待たされた。
だいたい、組織の人間だと嫌がらせで
なかなか遺体の引渡しをしない事もあるし
親族が到着していないというのもあった。
しばらくして、初老の女性がこちらへ歩いてくる
ヨシノリの母親だと分かった。
軽く挨拶をして、ヨシノリと中学で野球をしていた事や
一緒に仕事をしていた事などを話した。
それから1時間ほどして、白衣を着た若い奴らが
世間話をしながら2~3人歩いてきた。
オイラが到着してから4~5時間が過ぎていた。
ヨシノリの母親『ヨシノリの母ですが・・・引取りにきたんですが・・・』
ヨシノリの母親が、そいつらの1人に言った
白衣の男『ええ?だいぶ前に、葬儀屋が持って行ったよ』
ふざけるな!と思った瞬間に
ヨシノリの母親は、持っていたハンドバックを白衣の男に
投げつけた。
ヨシノリの母親『ヨシノリは物じゃないんです!物じゃないんですよ』
といって泣き崩れた。
今でも、忘れられない。
オイラはハンドバックの中身を拾い、抱える様に
ヨシノリの母親を車に乗せて、葬儀場の霊安室に向かった。
霊安室に着くと棺の中にヨシノリが眠っていた。
ヨシノリの顔を見るとすぐに悲しみが怒りとなった。
心不全が死因の顔は腫れ上がり、唇が裂けていた
手足もアザだらけで紫になっていた。
オイラもいままで、ケンカでボコボコの奴、ボクサーでKOされた奴を
見てきたが、ここまでひどいのは初めてだった。
ヨシノリは刑務官に殺されたのだと確信したのと、
どれほどひどい仕打ちを受けたのかという怖さと、
それに耐えながら、死んでいった者の無念さと、
色々な感情が交差した。
刑務所で亡くなる人は10年で1500人ほどいるそうだ
年間150人が刑務所で亡くなっているという事になる。
そのうち、死因が適正であるのが、どれほどだろうか。
何年か前に名古屋刑務所にて
刑務官たちが消防の高圧ホースで受刑者の肛門に放水し
内臓を破裂させ殺害した事件があった。
しかも、コイツラは隠蔽しようとした。
おそらく、氷山の一角だろう。
現代社会において、そんな拷問や、ナブリ殺しのような事が
刑務所という、塀のなかでは平然と行われているのだ。
誰しも、人生の中で、殺したいほど憎い奴というのに出会うことがある。
しかしながら、憎んでも実際に行動に移す人は、ほとんどいない。
殺そうとしても、相手に親や子供、愛する人間がいると思うと
相手がより一層、人に見えてしまう。
だから殺せないのだ。
しかし、この刑務官たちは違う
公権力を振りかざし、縦社会のストレスを
抵抗できない受刑者を選び、集団で殺した。
人の姿をした何かだ。
心不全と診断した検死官にも責任はあるだろう。
だが、組織に属するオイラがどんなに訴えても
当然、検察も取り合ってくれない。
それが人命に関わっていてもだ。
ヨシノリの葬儀が終わり、
ヨシノリの母親は息子の遺骨を抱いて帰って行った。
しばらくして、ヨシノリの母親から連絡がきた
刑務所でヨシノリが亡くなった場所を見たいという。
刑務所側には手続きを済ませたから、
一緒に来てくれと言う事だった。
駅に迎えに行くとヨシノリの母親が待っていた。
つづく・・・・・・
