一年を通して、一番好きな季節は春である。
桜の花が綻び始めると、なんだか元気が出てくる。
新しい息吹の瞬間を見ていると力が湧いてくる。
私にとって春とはそういう季節であった。


桜が満開になる頃、決まって私は九段に行く。
そして、千鳥ヶ淵の桜並木を散策する。
日本中に桜の名所は数あれど、
千鳥ヶ淵に勝る名所はまずない。
そう思えるほど実に見事なのだ。

桜に囲まれながら、思いを新たにする。
桜に囲まれながら、希望を抱く。
それが、毎年の日課のはずだった…

ラーフラとは邪魔者という意味である。
いきなり、自虐的になるが私はラーフラ(邪魔者)らしい。


梅の香りが辺り一面に広がり始めた、春の麗らかなある日、
私は、職場の上司に呼び出された。
過去に何か失敗をした時は、決まって呼び出されていたが、
その日は、思い当たる節が何もなかったのだ。

勤めてかれこれ10年。
万年平だった私も、ついに役職を与えられるのでは?
などという淡い期待を抱きながら、
応接室に入った。
絶望が迫っているなどとは夢にも思わず……


意気揚々と扉を開けた瞬間、
室内の重々しい空気が確かに感じられた。
そして、思いもよらぬことを言い放たれたのだ。

あなたは、ラーフラ(邪魔者)だと……

無論、本当にラーフラ(邪魔者)と言い渡されたわけではないが、
遠まわしに、そう言っていることくらい、理解できた。
こちらとて、そんなに馬鹿ではない。

そして、邪魔者の烙印を押された私は、地獄に送り込まれることになる。