皆さんは1番大切な人がいますか?


また、自分の事を1番大事にしてくれる人がいますか?




 18の春。

 ある人と出会った。

 彼は、身長が高いわけでも特別顔が良い訳でもないけど、私の目には輝いて映っていた。


 彼の声はそよ風みたい。歌うと上手く風に乗れないみたいで、なんだかほっとする。

 欠点を探したい訳じゃないけど、近くにいるような気になるから。

 それでもやっぱり彼はそよ風だ。上手く掴めない。

 

 気がつくと、私は彼の隣にいた。食べる時も、仕事の時も、休憩の時も。

 その横顔が眩しくて上手く見れないでいた。

 彼がくれた1口クロワッサンも10口分に感じた。

 

 初めて名前で呼んだ日、今でもはっきり覚えている。

 家まで送ってもらった日も、

 2人でご飯に行った日も、

 買い物に連れて行ってもらった日も、

 私の家で料理をご馳走した日も、

 全部がきちんと引き出しに整理整頓されている。


 しだいに彼の懐に入っていけるような人間に私はなった。仕事のおかげかもしれないが、話も上手くなっていった。

 彼の笑う顔が見たくて、

 もっと彼の近くにいたくて、

私はひとつ夢を捨てた。




次回、転勤。