約束当日。
人ごみの中で彼が見つけられるだろうかと
少し不安になりつつ辺りを見回した。
昔なら絶対見つける事が出来た。
今はもう顔すらはっきり思い出せない。
繁華街の中で見つけるのは困難だろう。
そう思いながら約束の場所へと急ぐ。
でもそんな心配は杞憂に終わった。
アタシの目はあの人の姿をしっかりと捉えて。
誰とも見間違える事は無かった。
6年経っていたのに。
その視線に気づいた彼がこちらを振り返る。
「よう」
まるでつい最近会ったばかりのような挨拶をして
あの人は微笑んだ。
結局その日は二人で軽く食事をしながら
お互いの事を語り合う事に費やした。
もう恨み言すら出てこない。
あの人が生きて、目の前に居る。
ただそれだけで嬉しかった。
「会わないでいるべきだと分かっていたけど、
どうしても出来なかった」
「信じろとは言わない。分かってくれとも。
でも君を失うのが一番辛い」
普段なら聞く気にもなれないような言葉すら
素直に信じる事が出来た。
そして。
あの人をまた失うのが怖くなっている自分に気がついた。