作　アーサー・ミラー　

翻訳　水谷八也　演出　桐山知也　

俳優座劇場プロデュース　

https://note.com/kangekibunikki/n/n6d41265f8eec

先月の事前講座で演出の桐山は「真っ当なミラーからはみ出してみたい」と語っていた。そのはみ出しがどの部分なのか、正確には理解できたかどうかわからない。NTLiveのAll my sonsを先月下旬に映像で観ていたので、もちろん明らかな違いはわかった。例えば明確なものは子役や林檎の木だったり、またト書きの朗読だったり。でもやはり本質的には本は変わらず強烈。

父ジョー

Sure, he was my son. But I think to him they were all my sons. And I guess they were, I guess they were. I’ll be right down.

母ケイト

Don’t, dear. Don’t take it on yourself. Forget now. Live. Chris stirs as if to answer. Shhh . . .

最後の場面、二人それぞれの苦悩を示す印象的な台詞だ。

今回、ケイト役に山本郁子が出演することが本作の観劇のきっかけだったこと、間を置かずに違う演出で二回観たこともあって、前回とは違い感情移入の対象は母ケイトだった。意味のない人生は生きる価値がないと考えるジョン。クリスもある意味同じだが、次男を失うという現実から目をそらしてきた母は長男にとにかく生きろと。それが母親のメンタリティなのかもしれない。

時代に翻弄される人々。戦勝国であっても。生き抜くためには、したたかでなくてはならない。今でも同じだが、あの時代は更に死と隣り合わせだった。

昨日観た「Missing People 野兎たち」で、サキコ役が印象的だったSusan Momoko Hingleyが客席にいて、終演後に少し話す機会があったのは望外。この二作品に共通する問題意識を彼女も感じたようだ。

日本演劇界の大物も何人もいて、ある演出家は「やりたかった」と。そうだろうな。何かわかる気がするような。何年か先に是非手掛けて欲しいと思う。

キャストは粒ぞろい。20世紀半ばの中部アメリカの頑固オヤジを吉見一豊が、そして時代や洋の東西を越えた母親ぶりを山本郁子が好演。加えてクリス役の竪山隼太とジョージ役逢笠恵祐、アンの佐藤玲といった若手が出色。ドクタージムの斉藤淳は屠殺人ブッチャーで二回観ているが、NTLiveのスール・リミ同様、ストーリーに与えるアクセントが絶妙だった。少し話ができて良かった。

連日の素敵な劇場体験、今週はまだまだ続く。

#彼らもまた我が息子