初日に続き2回目。全体的にバランスが修正されたのだろう、台詞が心に沁みる。観終えた今、このフライヤーの写真や「記憶の影を照らす追憶の光」という言葉の意味を噛みしめている。

ウィングフィールド一家が何とか保ってきた均衡は、ジム・オコナーの登場により、この写真の水面の如く崩れる。最後のトムの独白の場面。彼の優しくも激しい言葉は儚く、そして哀しい。

その追憶の光がローラを、そしてガラスの動物園を照らす様の美しさ。前回も書いたが、照明の見事さが作品に与える影響をここまで感じたことはない。

先週金曜の初日の前、マチネで観た「ああ、母さん、あなたに申しましょう」のとある場面を思い出した。生まれ来る双子の前世の二人が「私たちは二人が期待するほど優秀じゃない」「でも私たちは二人をとても愛します」と、両親に語りかける。

サザンベルだったアマンダの娘時代は彼女にとって都合のいい思い出。その記憶はもはや追憶となり、それが娘と息子を追い詰める。子供には子供の人生があるにもかかわらず。自ら選んだ夫が旅に出て帰らない。息子がその道を選ぶ事は、彼女にとってワーストシナリオだが、それはある意味必然と観客に思わせる。アマンダの身勝手を笑ってはならない。自ら果たし得なかった夢を次の世代に託したくなるのは、誰にでもあるのだから。ジムがローラに語ったように、「どっちを見ても平凡な人間ばかり」なのだ。

パンフレットに塩田朋子が書いていたエピソードを読むと、29年前に彼女がローラを演じた公演の台本には、全ての台詞にダメ出しのメモが書かれていたという。当時の演出を手掛けた坂口芳貞が、「ああ、母さん…」で「そんなに優秀じゃない」と語る前世の人物を演じていたことは、演劇の見えない糸の不思議さを思い起こさせるのだ。

さて。この観劇日記の4〜6月ベスト3に亀田トムと塩田アマンダを選んだ。敢えて永宝ローラと池田ジムを選ばなかった理由は一つ。この二人にはまだポテンシャルがある。初日と比べても更に成長が感じられた永宝千晶と池田倫太朗には、これからの一層の活躍に対するエールを送りたい。倫太郎は「日々精進です」と。そう、まだまだ良くなる筈なのだから。

出奔した父親の表情が、照明によって微妙に変化するように見えた。トムがローラを見守るように、そして父もおそらく空の向こうから。

それにしてもトムの最後の独白は素晴らしい。さすが亀田佳明、としか書きようがない。あの場面、私の記憶に鮮明に残り続けるだろう。

ガラスの動物園 #2