私が演劇にはまった理由-理解のためのガイダンス | 新宿信濃町観劇部日記時々野球とラグビー

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兵庫県出身。還暦直近の年男。文学座パートナーズ倶楽部会員。

私が演劇にはまった理由 続々


3.理解のためのガイダンス


先日の新宿紀伊國屋サザンシアター、文学座本公演「鼻」のアフタートーク。江守と渡辺のダブル徹にMCは堀尾正明キャスター。堀尾氏が文学座研究所の本科生だったこともあり内輪話も盛り込んで、事情を知る人も知らぬ人も楽しめるトーク。


三人の掛け合いはかなりのハイレベルで、客席の爆笑を誘発しながら作品の理解も促すプロの技。役作りの延長なのか、江守徹がいい感じでボケをかまし、渡辺徹と堀尾正明がすかさず突っ込みを入れる。熟練のキャスターと稀代のエンターテイナーだからこそできる芸なのかもしれないが、その根底には観客を喜ばせる使命感のようなものも伝わってきた。その渡辺が「鼻」「別役実作品」について語ったときに、「芝居は解説を聞くものではないのですが」と発言したのが印象に残った。


ただ渡辺徹の話は、解説というよりは素人向けの「理解のためのガイダンス」だった。二度目のアフタートークで予定外の乱入をした後に彼が場の空気を支配したのだが、それは存在感の強さだけが理由ではなく、判り易く届けようとする意図に客席も舞台上の他の俳優たちも反応したからではないか。


さて。歳の離れた従妹が舞台俳優をやっていて、私には劇場の敷居はもとから高くなかった。ただ、演劇の世界に本格的に誘ってくれたのは松山愛佳だ。彼女が出演する文学座本公演「女の一生」を三越劇場に観に行き、終演後少人数でのアフタートーク。理解が深まり更に興味が湧いた。「愛佳さん、もう一度観るよ」。このアフタートーク、思い起こせば渡辺徹と同じく「理解のためのガイダンス」だったような気がする。


それでも松山があの李麗仙と共演した少女仮面では、ガイダンスを以ってしても「わかったフリ」までも至らなかった。ある程度までは予備知識は必要だったということなんだろう。この場合は嵐が丘のヒースクリフが重要なキーワードの一つであり、恥ずかしながらここは私の引き出しから抜け落ちていた。