令和元年司法試験の成績通知書がきました。



これまでブログを見ていただいた方や
来年の受験生の参考のためにも結果をのせたいと思います。



ただ特定回避のため、得点等は伏せておきます。



憲法D
行政A


民法B
商法A
民訴E


刑法A
刑訴B

経済40

順位800台




お久しぶりです。


これからは、就職活動についてつらつらと書いて行きたいと思います。


就活は、合格発表後にはじめました。


発表前は、平日フルタイムでアルバイトをしていました(現在もですが)。


内定とれるのはいつになることやら…






無事、合格しました。



ブログを見ていただきありがとうございました。







現在、司法試験上位合格者(総合10位台)に再現答案を添削して頂いております。

添削者からの許可があれば、近日中にその添削コメントをブログに載せたいと思います。

また、自己評価等も書いていきたいと思っております。


第1問

1 7社が本件合意という基本合意をしたこと、及び3社がこれに協力したことについて、B及びJの行為が2条6項に当たり3条後段に違反しないか。

2 B及びJは、「事業者」(2条1項)であるから、3条が適用される。

3 行為要件として、①「事業者」が「他の事業者」と、②「共同して」、③「相互にその事業活動を拘束」することが必要である。

⑴ ①「事業者」が「他の事業者」ととは、競争関係にあることを要する。B及びJは、穀物貯蔵等施設の建設という「同種の役務」を「同一の需要者」に供給しているから、競争関係にある(2条4項1号)。よって、①を満たす。

⑵ ②「共同して」とは、意思連絡を意味し、複数事業者間で相互に取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調をあわせることをいう。本件では、7社の間に本件合意という取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調をあわせる意思連絡がある。他方で、3社は、Aから、話合いを行うので出席するよう持ち掛けられたが、これを見合わせている。もっとも、明確に拒絶しているわけではない。また、3社は、自社も受注できると考えた特定農業施設工事の入札については、低価格で入札を行おうと考えている。しかし、全ての入札について積極的に入札を行うわけではない。また、特定農業施設工事以外の入札において協力を得たいと考えているから、本件合意に協力する動機がある。そして、A社は、3社が入札に指名されることは少ないと考えたが、発注が行われるたび3社に指名の有無と受注意思を確認し、協力が得られる場合には、3社に入札価格を連絡することとし、その方針を6社に伝えている。そうすると、7社は、3社が本件合意という取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調を合わせる意思があったといえる。そして、3社も、7社が本件合意という取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調をあわせる意思があったといえる。これは、現に、3社が第1回から第4回の入札において、本件合意に協力していることからも裏付けられる。よって、②の要件も満たす。

 なお、B社が第5回入札で離脱しているが、②の要件は、基本合意の時点で成立していれば足りるから、離脱によってこの要件が満たされないことにはならない。

⑶ ③は、各社の本来自由な自己の事業活動が意思連絡によって制約され、事実上拘束されることをいう。B及びJは一度も落札していないため、拘束がないとも思える。しかし、B及びJも本来自由な入札及び入札価格の決定が本件合意によって制約され、事実上拘束されている。よって、③の要件も満たす。

4 「一定の取引分野」とは、市場を意味し、共同行為が対象とする取引およびこれにより影響を受ける範囲を検討し、その競争が実質的に制限される範囲として画定される。本件では、対象とする取引およびこれにより影響を受ける範囲は、特定農業施設工事の入札である。

5 「競争を実質的に制限」とは、市場支配力を形成、維持、強化することをいう。10社が本件合意に基づいて談合を行っているから、市場支配力を形成したと推認される。また、3社は、自社も受注できる工事の入札については、積極的に入札すると考えているが、全ての入札について積極性があるわけではなく、また、穀物貯蔵当施設の建設能力は相対的に低いから、アウトサイダーとして牽制力が弱い。そもそも、3社は、談合の当事者であるから、牽制力にはならないといえる。そして、現に、第1回から第4回まで、それぞれ本件合意に基づきA、D、G、Fが落札している。よって、10社は、落札者及び落札価格を自由に左右し、市場支配力を形成したといえ、「競争を実質的に制限」したと認められる。

6 以上より、B及びJの上記行為は、2条6項にあたり、3条後段に違反する。

7 違反する行為がなくなった時期

⑴ 3条後段違反は、基本合意時に成立し、2条6項のいずれかの要件を満たさなくなった時に、終了する。

⑵ では、Bの離脱によって、2条6項の要件を満たさなくなったとして、違反行為が狩猟したと言えないか。

 離脱が認められるためには、離脱意思を表明する等、その意思が客観的に明らかになることが必要である。本件では、Bは、会合において、「必ず仕事を取る」、「二度とこの会合には戻らない」等と発言し、離脱意思を表明している。また、Bは、実際にJに協力しないで入札し、落札している。よって、離脱意思が客観的に明らかになっているから、離脱が認められる。

 しかし、Aは、Bの離脱意思の表明後も、Jに連絡しており、また、他のB社以外の者も何ら反対意思を表明していない。そして、平成30年8月1日に、本件合意のメンバーからBを除名することを決定している。そうすると、2条6項の要件はなお満たされているといえる。Bが除名されても、他の9社によって談合が行われれば、市場支配力が形成されるといえるからである。

⑶ もっとも、Eが、平成30年8月10日に公取委に報告を行い、公取委が平成30年9月20日に立ち入り調査を実施している。立入調査が行われれば、談合を継続することは困難であるから、調査時点において、市場支配力の形成が認められなくなったといえる。これは、現に、7社が本件合意に基づく会合を開いていないことも裏付けられる。

 以上より、平成30年9月20日に、違反行為が終了したといえる。

以上

第2問

設問1

1 本件計画は、15条1項1号に違反しないか。

2 X及びYは、「会社」であるから、15条1項1号が適用される。

3 X及びYは、吸収合併をするから、結合関係が認められる。

4 「一定の取引分野」とは、企業結合によって競争に影響が及びうる商品の範囲と、画定された商品に関して企業結合によって競争に影響が及びうる地理的範囲を、基本的には需要者にとっての代替性、必要に応じて供給者にとっての代替性を考慮して決する。

 X及びYは、いずれも医療製品の研究等を行うから、本件計画は水平型企業結合であり、それによって競争に影響が及びうる商品の最小単位は、甲である。医療機関は、販売承認を受けた製品のみを購入、使用しているから、これを受けていない甲は、需要の代替性がない。また、乙は、甲とは形状も異なり、乙を用いて一時的かつ短時間の点滴を行うことはできないから、需要の代替性がない。よって、商品範囲は販売承認を受けた甲である。また、2社は、日本法人であり、国内がに製造及び販売拠点を有し、国内外での販売拠点を経由して、製品を国内外の医療機関に販売しているから、地理的範囲は、国内である。よって、「一定の取引分野」は、国内における販売承認を受けた甲の製造、販売分野である。

5 「競争を実質的に制限することとなる」とは、当事会社が単独で、又は他の事業者と協調的行動をとることによって、市場支配力を形成、維持ないし強化する蓋然性が認められることをいう。

 単独

 X及びYの国内におけるシェアは、合計55%と市場支配力の目安となる過半を超える。もっとも、A社が45%のシェアを有しており、有力なアウトサイダーとなり、牽制力が強い。そうすると、当事会社が甲の供給量を制限し、価格を引き上げても、需要者はA社から甲を購入するであろうから、価格を維持できない。よって、市場支配力を形成する蓋然性が認められない。

 協調的行動

 当事会社の甲の全世界でのシェアは、65%であり、市場支配力の目安となる過半を超える。他方で、A社のシェアは20%にすぎない。また、競争事業者は、2社とA社のみである。さらに、A社は国内向けの供給余力は十分ではないから、協調的行動をとる動機がある。そして、A社は、甲の生産を第三者に委託することで、国内向け供給量を増やすことは可能だが、第三者が見つかっていないため、牽制力は弱い。また、国外において2社及びA社以外に甲を製造販売している事業者は少数であり、その上国内で販売実績はないから、競争圧力が弱い。さらに、医療機関は、国内で販売実績のない医療製品を購入することはまれだから、需要者圧力もない。また、新規参入業者が甲を国内で販売する場合、新製品の開発に一定の期間や投資を必要とするから、参入圧力が弱い。たしかに、病院が、競争的な購入方法を採ることが一般的であるが、頻繁には他の製造販売業者の製品に変更しない傾向があるから、需要圧力は弱いと言える。そうすると、2社及びA社は、互いに高い確度で行動を予測し、甲の価格を設定するといえる。そして、2社及びA社が、甲の供給量を制限し、価格を引き上げた場合、競争圧力、需要者圧力が弱いため、牽制力が働かず、価格が維持されるといえる。

 よって、協調的行動によって、市場支配力が形成される蓋然性があるから、「競争を実質的に制限することとなる」といえる。

6 以上より、本件計画は、15条1項1号に違反する。

設問2

1 本件計画は、2社とA社が協調的行動によって甲の供給量を制限し、価格を引き上げることによって市場支配力が形成される蓋然性があることに問題がある。そのため、M社が有力な牽制力として機能すれば、問題解消措置となる。

2 M社は、丙について15%のシェアを有している。また、点的関連製品について、流通業者間で販売競争が展開されており、シェアの変動があるため、協調的行動をとることは困難な状態といえる。そして、製造販売業者も、取引先流通業者変更や取引内容の随時見直しを行うことが可能であるため、競争促進効果が期待できる。さらに、M社は、甲の製造、販売も行っていないが、過去にX社製甲を販売し、一定のシェアを獲得した実績もあり、甲の販売を行う十分な経験、能力を有している。また、甲の販売のノウハウがあれば、他社製甲についても、販売を行うことは可能である。そして、Mは、甲の製造経験はないものの、ノウハウ等を包括的に取得できれば、有効活用する能力を有している。Mは、点滴針の品揃えに弱点があるが、甲の製造を含む供給手段を獲得し、甲を取り扱うことになれば、弱点を克服できる。そして、Mは、2社及びA社との間に資本関係、人的関係を有していないから、2社及びA社からの圧力によって牽制力を失うこともない。そうすると、X社らが、Mに対し、甲の製造販売のノウハウ等を包括的に取得させ、甲の供給手段を獲得させれば、Mは有力な牽制力になるといえる。また、医療機関等からの需要者圧力も一定程度働く。

3 以上のような措置をとれば、問題を解消することができる。

以上

設問1

1について

⑴ 下線部①の逮捕

 平成301120日に、本件業務上横領事件が発生しているところ、X社社長の供述調書のほか、Aの供述調書、捜査報告書等があるから、「相当な理由」(199条1項)が認められる。

 また、被害額は3万円と高額ではないが業務上横領(刑法253条)は、10年以下の懲役という重大な犯罪であるから、科刑をおそれ、XやAに対し供述をしないようにする等働きかけて証拠隠滅を図るおそれがある。甲は、単身生活、無職という身軽なため逃亡のおそれもある。よって、「明らかに逮捕に必要がないと認めるとき」には当たらないから、逮捕の必要性が認められる(199条2項但書、規則143条の3)。

 以上より、逮捕の要件を満たすから、①の逮捕は適法である。

⑵ 勾留

 上記逮捕の理由、必要性はなくなっていないから、「相当な理由」(207条1項、60条1項本文)が認められる。

 また、上述の通り、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」(60条1項2号)、「逃亡すると疑うに足りる相当な理由」(同項3号)に当たる。

 そして、上述の通り、甲は、科刑をおそれて、罪証隠滅をするおそれが高いこと、単身身軽であって逃亡のおそれが高いことから、「勾留の必要」(207条1項、87条1項)が認められる。

 また、平成31年2月28日に通常逮捕し、同年3月1日に勾留しているから、時間制限も遵守されている(203条1項、205条1項2項)。

 以上より、勾留の要件を満たすから、勾留は適法である。

⑶ 勾留に引き続く平成31年3月20日までの身体拘束

ア まず、平成31年3月10日から20までの身柄拘束が適法であるためには、勾留延長の要件を満たす必要がある(208条2項)。

 甲は、事件当日、H店かI店にいたと供述しているところ、H店には来店していないことが判明しているが、I店については明らかとなっていない。そのため、修理まで甲の身柄を拘束しておかないと、I店に働きかけたり、防犯カメラを壊したりするなどして罪証を隠滅するおそれがあるから、「やむを得ない事由」(208条2項)が認められる。

 よって、勾留延長の要件を満たす。

イ また、防犯カメラの修理までは、罪証隠滅、逃亡の防止のため、身柄拘束の必要性がある。その後、14日に、甲がI店に来店していないことが判明しているが、甲は、金額はよく覚えていない旨供述している。そのため、20日に自白するまで、罪証隠滅、逃亡を防止するため身柄拘束の必要性がある。

以上より、20日までの身柄拘束は適法である。

2について

⑴ Pは、本件強盗致死事件で甲を逮捕するには証拠が不十分であるため、何か別の犯罪の嫌疑がないかと考えていたこと、Rは、Pから、甲に本件強盗致死事件の嫌疑がある旨を聞き、同事件での逮捕も視野に入れて、両事件の捜査を並行して行うこととしているから、違法な別件逮捕勾留であるとの理論構成がある。

 令状請求段階で、捜査官の主観的意図を考慮するのは困難であるから、別件の逮捕、勾留の要件を満たしていれば、逮捕勾留自体は適法である。

 もっとも、別件の逮捕、勾留期間の取調べが専ら本件の取調べに利用されたときは、別件としての逮捕、勾留の実体を失い、違法な身柄拘束に転化する。

⑵ 本件では、2日、3日及び5日は、横領事件について取調べている。また、4日から6日は、任意であると説明した上で強盗について取り調べており、甲は否認している。そして、甲のアリバイを崩すために14日のカメラの修理完了までは身柄拘束の必要性がある。

 しかし、14日に甲がI店に来店していないことが判明した時点で、甲のアリバイが崩れているから起訴不起訴の判断が可能となっている。それにもかかわらず15日に甲が家賃を支払った旨の供述調書を作成、16日にYの供述調書を作成、17日に、原付を1万円で売却したことを捜査している。ほとんど強盗について取り調べている。

 よって、14日以降の身柄拘束は、実体を失い違法である。

⑶ しかし、この構成は採れない。

 上述の通り、甲は、I店に来店していないことが判明した後も、金額について明らかにしておらず、罪証隠滅、逃亡を防止した上で身柄拘束をする必要があるからである。

 以上より、身柄拘束は適法である。

設問2

1 まず、公訴事実1は、業務上横領であるのに対し、公訴事実2は、詐欺罪であるから、構成要件が異なり、審判対象画定に不可欠な事実の変動があるため、訴因変更が必要である。

2 ②の訴因変更の請求は、「公訴事実の同一性」(312条1項)が認められる範囲で許される。

 「公訴事実の同一性」は、訴因変更の限界を画する機能概念である。また、その裏返しとして、一事不再理効(337条1号)の範囲等の限界も画する。

 よって、公訴事実の同一性は、基本的事実関係が同一であるか否かによって判断し、その判断の補充として、非両立性基準も用いる。

3 本件では、犯罪の日時がいずれも平成301120日である。また、集金の相手方がAという点も同一である。さらに、集金額が3万円という点も同一である。そして、場所もG市J町1番地所在のA方付近という点で同一である。異なる点は、被害者がXであるか、Aであるかという点にあるにすぎない。

 よって、基本的事実関係の同一性が認められる。

 また、同一日時、場所において、Aから、二度、3万円の集金行為を行うという状況はありえない。集金は、一回行うという性質をもつからである。よって、非両立性が認められる。

 以上より、公訴事実の同一性が認められる。

 もっとも、本件では、公判前整理手続を経ているから、訴因変更を許可することは、その趣旨に反し許されないのではないか。

 整理手続の趣旨は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行う点にある(316条の2第1項)から、争点の相違等考慮しその趣旨に反する訴因変更は許されない。

 本件では、整理手続において、量刑のみが争点とされており、甲の集金権限に関する主張はなかったから、訴因変更することが上記趣旨に反するとはいえない。また、横領事件は、裁判員裁判で審理されるから、争点を明確にするため、訴因変更を行うべきである。さらに、甲は、集金権限がなかったとのべ、X社社長も、甲の集金権限はないと述べているから、詐欺罪の成立可能性が問題となることは明らかであり、訴因変更する必要がある。

 よって、訴因変更をすることが、上記趣旨に反しない。

 以上より、裁判所は、訴因変更を許可すべきである。

以上

 

 

設問1

1 甲が、Aから、本件キャッシュカード等を領得した行為について、詐欺罪(246条)成立する。

2 「欺いて」とは、財産的処分行為に向けられ、交付の判断を基礎づける経済的重要事項を偽ることをいう。

 本件では、甲が、預金口座が不正引き出しの被害にあっているから、本件キャッシュカード等を確認させてくださいなどと述べている。Aにとって、預金口座が不正引きだしの被害にあっているか否かは、経済的重要事項である。よって、甲は、交付の判断を基礎づける経済的重要事項を偽っているから、「欺いて」といえる。

3 これによって、Aは、預金鋼材が不正引き出しの被害にあっているか否かの点について、錯誤に陥っている。

3 処分行為が認められるためには、占有の移転を基礎付ける外形的事実を認識している必要がある。

 たしかに、甲は、玄関先で、Aが見ている前で本件キャッシュカード等を封筒に入れているにすぎない。そうすると、いまだ玄関先というAの支配領域であることから、Aは占有の移転を基礎付ける外形的事実を認識しているとはいえないとも思える。

 しかし、甲の所有物である封筒の中に、本件キャッシュカード等という小さく占有が失われやすい物をいれているから、その時点で、カード等の占有が甲に移転している。そのため、Aは、占有の移転を基礎付ける外形的事実を認識しているといえる。そして、Aはその認識のもと、カード等を甲に交付している。

 よって、処分行為が認められる。

4 そして、Aはカード等というATMからの引き出しができる財物性のあるものを失っているから、財物の移転、損害が認められる。

5 以上より、甲には、詐欺罪が成立する。

6 なお、封筒に入れた後の行為は、詐欺罪成立後の事後的な事情に過ぎず、本罪の成立に影響はない。

設問2

1 ①乙に事後強盗の罪の共同正犯が成立するとの立場(238条、60条)

⑴ まず、甲に事後強盗罪が成立するか検討する。

ア 「窃盗」とは、窃盗未遂も含む。事後強盗は、窃盗という身分に着目する犯罪だからである。甲が現金を引き出そうとした行為に窃盗未遂が成立するから、甲は、「窃盗」にあたる。

イ 甲は、Cによる逮捕を免れるために、脅迫を行っているから、「逮捕を免れ」る目的がある。

ウ 「脅迫」とは、反抗抑圧に至る程度である必要がある。甲は、Cに対し、「その手を離せ」と言ったが、Cは、これに応じていないから、上記程度に至る脅迫はない。しかし、甲と乙が脅迫することを共謀した上で、乙が、刃体の長さ約10センチメートルのナイフという殺傷能力の高い武器を示し、「ぶっ殺すぞ」と脅迫的言辞を用いているから、反抗抑圧に至る脅迫が認められる。

エ 窃盗未遂後にその場所で、脅迫を行っているから、窃盗の機会性も認められる。

オ 以上より、甲に事後強盗罪の共同正犯が成立する。

⑵ 次に、窃盗の身分がない乙が、脅迫に加功したことで事後強盗罪の共同正犯が成立する。

 まず、事後強盗の実行行為は、暴行脅迫であり、窃盗は身分である。そして、事後強盗が暴行、脅迫の加重類型であるとみるのは無理があるから、真正身分犯である。事後強盗と暴行、脅迫では保護法益が異なるからである。

 そして、651項は、その文言から、真正身分犯について規定している。また、非身分者も身分者を通じて法益侵害が可能であるから、「共犯」には共同正犯も含まれる。

 よって、乙には、事後強盗罪の共同正犯が成立する。

2 ②乙に脅迫罪の限度で共同正犯が成立するとの立場(222条1項、60条)

⑴ 事後強盗の実行行為は、窃盗であるとして、承継的共同正犯の成立を検討する。

⑵ 共犯の処罰根拠は、結果に因果性を与える点にある。そうすると、既に発生してしまった結果に対して因果性を遡ることはできない。

 もっとも、先行行為を積極的に利用した範囲については、共同意思のもと、自己の犯罪遂行の手段として利用しているといえるから、結果惹起に対する因果性が認められ、共同正犯が成立する。

⑶ 本件では、乙は、甲が商品を窃盗したという認識であるが、客観的には、窃盗未遂にすぎない。そうすると、窃盗未遂行為を積極的に利用するとはいえない。

 よって、事後強盗の共同正犯は成立しない。

 乙は、甲と脅迫を共謀し、それに基づき脅迫行為を行っているにすぎないから、脅迫の共同正犯が成立する。なお、脅迫の限度で、構成要件の付合が認められるから、その範囲で共同正犯となる(部分的犯罪共同説)。

3 私見

 ①の見解が妥当であり、乙には、事後強盗罪の共同正犯が成立する。②の見解のように事後強盗の実行行為を窃盗とみると、窃盗に着手した者は、すべて事後強盗の未遂になりかねないからである。また、「窃盗が」と規定しているのは、身分であると考えるのが法の文言に整合するからである。

設問3

1 丙がDの傷害結果に関する刑事責任を負わないとする理論として、Dに対する傷害の故意(38条1項)が認められないとする理論がある。

 しかし、故意責任の本質は、犯罪事実の認識によって反対動機が形成できるのに、あえて犯罪行為に及んだことに対する道義的非難の点にある。そして、犯罪事実は構成要件として累計されているから、認識した事実と発生した事実との間に構成要件の範囲内で符合が認められるならば、故意が認められる。また、故意の対象を構成要件の範囲内で抽象化するから、故意の数は問題にならない。

 本件では、甲とDはおよそ人という範囲内で符合しているから、故意が認められる。上記理論には、この点に難点がある。

2 次に、正当防衛(36条1項)によって違法性が阻却されるという理論がある。しかし、Dは、不正の侵害を行っていないから、「急迫不正の侵害」が認められず、要件を満たさない。よって、この点に難点がある。

3 緊急避難(37条1項)によって違法性が阻却されるという理論がある。

 Dが甲から強盗行為をされているから、「現在の危難」がある。また、丙は、Dを助けるために、ワインを投げているから、「危難を避けるため」といえる。そして、ワインを投げつける行為は、丙が採りうる唯一の手段であったから、「やむを得ずにした行為」に当る。しかし、「生じた害が」傷害であるのに対し、「避けようとした害」は、Dが甲の要求に応じる素振りさえ見せていないことから、意思決定の自由にすぎない。そのため、法益権衡の要件を満たさない。よって、要件を満たさず、緊急避難は成立しない。緊急避難は、この点に難点がある。

 また、「その程度を超えた行為」として、過剰避難が成立するという理論があるが、任意的減免にとどまるという点に難点がある(37条1項但書)。

4 丙が正当防衛状況を認識しているから過剰防衛によって故意が阻却されるという理論がある。

 違法性阻却事由を基礎づける事実に誤認があった場合、違法性の意識を喚起できないから、反対事実を認識できず、故意が阻却される。そこで、丙の認識を基準として、正当防衛が成立していたか検討する。

 甲がDに対して、強盗行為を行っているから、「急迫不正の侵害」が認められる。また、丙は、Dを助けるためにワインの投げつけを行っているから、「防衛するため」といえる。そして、甲は、刃体の長さ約10センチメートルのナイフという殺傷能力の高い武器を使用しているのに対し、丙は、ボトルワインを投げるという手段をとっているにすぎない。また、甲は25歳の男性であるのに対し、丙は、30歳の女性である。そして、投げつける行為は、丙が採りうる唯一の手段であった。よって、「やむを得ずにした行為」に当る。

 よって、過剰防衛が成立し、故意が阻却される。ただし、過失犯(過失傷害(209条))の成立可能性があるという点に難点がある。

以上

設問1

1 課題⑴

 民訴法4条ないし22条は、移動距離、当事者の利益、裁判資料収集の観点、訴訟経済等を考慮し、合目的的に定められている。そうすると、管轄を当事者の一方が恣意的に決定できるものではない。

 Yの解釈は、XY間に本件定めについて「合意」(11条1項)があることに根拠がある。しかし、Xは、本件契約を締結する際に、本件定めについても合意していたとはいえない。

 よって、本件定めはA地裁を本件契約に関する紛争の管轄裁判所から排除することを内容とするものではない。

2 課題⑵

⑴ 16条2項は、「相当と認めるとき」に自ら審理及び裁判をすることができると規定している。この趣旨は、移動距離、当事者の利益、裁判資料収集の観点、訴訟経済等を考慮し、「相当と認めるとき」には当該裁判所で審理及び裁判をすることが適切であるという点にある。そうすると、この趣旨が妥当する場合には、本件訴訟は、A地裁で審理されるべきである。

⑵ 本件では、A市内にあるA支店で本件契約を締結しているから、裁判資料はA支店にあるといえる。また、Xは、A市に住んでおり、A市内で本件事故が生じているから現地に近いA地裁の方が裁判資料収集の観点から適切である。さらに、子供がどのように本件車両を使用したのかについて確認するために、子供を約600㎞離れたB地裁まで移動させるのは、学校教育等との関係で支障がある。さらに、Xの居住地、Lの事務所、YのA支店はいずれもA市にあるから、A地裁で審理することが合理的である。

⑶ よって、A地裁で審理及び裁判をすることが「相当と認めるとき」といえる。以上より、本件訴訟はA地裁で審理されるべきである。

設問2

1 「自白」(179条)とは、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める旨の陳述である。当事者拘束力の趣旨は、裁判所拘束力によりその事実について証明することを要しないと信頼する相手方を保護する点にある。そうすると、当事者拘束力の範囲は、裁判所拘束力と同じである。

 裁判所拘束力は、主要事実にのみ生じる。間接事実や補助事実は、主要事実を推認させる点で証拠と同様の機能があり、この点に拘束力を生じさせると自由心証主義に反するからである。

 よって、当事者拘束力も、主要事実にのみ生じる。主要事実とは、権利の発生、変更、消滅を直接基礎づける事実である。

2 元の請求の訴訟物は、原状回復としての400万円の返還請求である。そうすると、元の請求との関係では、①、③、⑤、⑥が主要事実であり、④は間接事実である。④は、上記請求の発生を直接基礎づける事実ではないからである。

 他方で、追加請求の訴訟物は、債務不履行に基づく損害賠償請求である。そうすると、④の事実は、因果関係を立証する点で、上記請求権の発生を直接基礎づける事実であるから、主要事実である。

 そうすると、元の請求との関係では、④について不要証効が生じているにすぎず、当事者拘束力はない。

3 では、追加請求によって、元の請求についての訴訟資料が、追加請求についての訴訟資料に流用されることから、元の請求との関係で④について自白したことが、追加請求との関係でも自白にあたり、当事者拘束力が生じるか。

 Yは、追加請求がないときに④の自白をしているにすぎず、元の請求で自白していることが追加請求との関係でも自白になるとは認められない。主要事実④について、弁論権を保障する必要があるからである。また、追加請求との関係では、④の事実について証明する必要はないとの信頼を保護する必要もない。

 よって、④の事実については、当事者拘束力が生じていないから、Yは、④の事実を認める旨の陳述を自由に撤回することができる。

設問3

 220条4号ハ、197条1項3号の趣旨は、経営戦略が流出することで企業に損害が生じるのを防止する点にある。そこで、提出義務を負うかどうかを判断する際には本件日記の提出によって経営戦略が流出し、企業に損害が生じるか否かという観点から検討する。

 本件では、仕様を有していないか否かが争点となっている。そうすると、甲シリーズのキャンピングカーには上段ベッドシステム部分に設計上の無理があり、その旨を上司に進言したが取り合ってもらえなかったという内容の記載によって、仕様を有していなかったことを推認することができる。そして、この記載が裁判に明らかになっても、経営上の機密に関わるものではないから、経営戦略が流出し、損害が生じるおそれはないと考えられる。

そうすると、本件日記の内容に、他に企業戦略が記載されているか否かについて、検討すべきであるといえる。

2 220条4号ニの趣旨は、プライバシー保護にある。本件でも、Zが本件日記の詳しい内容はプライバシーにかかわるから言えない等と述べているから、日記のプライバシー性についても考慮すべきである。

以上

設問1

1 乙社が、総会を自ら招集する場合

⑴ 乙社は、平成29年5月の時点で甲社の総株主の議決権の4%を保有している。また、平成30年1月との関係で6か月前である。よって、乙は「総株主の100分の3以上の議決権を6カ月前から引き続き有する」(297条1項)といえる。

⑵ 乙は、取締役に対し、総会の目的事項及び招集理由を示して、総会の招集を請求する(297条1項)。

⑶ そして、上記請求の後遅滞なく招集手続が行われない場合(297条4項1号)、請求があった日から8週間以内の日を総会の日とする総会の招集通知が発せられない場合(同項2号)には、「裁判所の許可を得て」、総会を招集することができる。

2 乙社が、提案権を行使する場合

⑴ 乙社は、公開会社であるから、役会設置会社である(327条1項)。そのため、乙は総株主の議決権の100分の1以上の議決権を6カ月前から引き続き有する必要があるが、(303条2項)、上述の通り、議決権保有要件は満たす。また、提案権行使を8週間前までにしなければならない。

 また、議案の要領を招集通知に記載することを請求(305条)するためには、8週間前までにしなければならない。議決権要件は303条と同様に認められる。

3 いずれが適当か

 自ら招集する場合は、一旦、取締役に請求をしなければならない点、裁判所の許可を経なければならない点で手続が煩雑である。よって、提案権の行使の方が適当である。

設問2

1 乙社は、本件新株予約権無償割当ての差止めを請求することを検討しているが、この差止については、明文がない。無償割当ては、「株式の数に応じて」(278条2項)なされることが義務付けられており差止めがなされることを想定していないからである。

 もっとも、247条の趣旨は、株主の地位に実質的変動を生じさせる場合に、事前手段として差止めを認める点にある。よって、この趣旨が妥当する場合には、同条の類推適用が認められる。

 乙社は、非適格者とされており、予約権を行使することができない。そのため、適格者が予約権を行使すると持株比率が低下し、株主の地位に実質的変動が生じる。よって、同条の類推適用が認められる。

 以上より、乙社は、本件新株予約権無償割当ての差止めを請求し(247条類推適用)、これを本案として、差止めの仮処分を申し立てる(民事保全法3条2項)。

2 乙社は、適格者の予約権行使により、持ち株比率が低下するから、「不利益を受けるおそれ」が認められる(247条本文)。

3 法令違反(247条1号)

 乙社が非適格者として予約権を行使できないことが株主平等原則(109条1項)に反し、「法令違反」が認められないか。

 平等原則は、「株主」としての地位について差別があることを規制するものである。

本件は、予約権者間に差別的な行使条件があるにすぎず、株主としての差別がないから、平等原則の直接適用はない。

もっとも、予約権者は、株主としての地位を有しており、また、278条2項も「数に応じて」と規定していることから、本件にも平等原則の趣旨が妥当する。

よって、109条1項の類推適用が認められる。

もっとも、平等原則は、会社の企業価値が毀損し、株主共同の利益を害する状態にある場合には、その趣旨を全うできない。よって、株主共同の利益が害される場合で、衡平の理念に反せず、相当性を欠くとはいえない場合には、平等原則に反しない。

本件では、総会には、後者の総株主の議決権の90%を有する株主が出席し、総会において、会社提案に係る議案は出席株主の67%の賛成により可決されている。乙社を除けば、反対は約3%にすぎない。そうすると、総会の判断として株主共同の利益が害される場合といえる。また、役会でも、乙社は、比較的短期間で株式を売買し、その売買益を得る投資手法を採っていることや、乙社の代表Bが甲社の事業に対して理解がないことが指摘されており、乙社の存在が会社の企業価値を毀損するといえる。

また、乙社に生じる不利益は、乙社がこれ以上の株式の買い増しを行わない旨を確約した場合には、役会が解消できる仕組みとなっているから、衡平の理念に反せず、相当性を欠くとはいえない。

よって、平等原則に反しないため、法令違反はない。

4 不公正発行(247条2号)

 「著しく不公正な方法」の判断については、主要目的ルールが適用される。しかし、無償割当ては、資金調達等の目的としてなされる場合に限らず、様々な場合に用いられる。そのため、必要性、相当性が認められるか否かによって判断する。

 本件では、上述の通り、総会の判断として乙社の存在が株主の共同利益が害される場合であるから、必要性が認められる。

 また、乙社の不利益を解消できる仕組みがあるから、相当性もある。

 よって、不公正発行にはあたらない。

5 以上より、乙社の差止めは認められない。

設問3

1 本件決議1の効力は適法である

2 Aの423条1項責任

⑴ Aは、甲社の代表取締役であるから、「取締役」に当たる。

⑵ Aが、P倉庫売却したことが、善管注意義務(330条、民法644条)に反し、任務懈怠が認められるか。

 Pを売却するか否かの判断は、専門的、経営的判断を伴うから、取締役に裁量が認められる。そのため、①行為時の状況において、判断の前提となった事実の認識に誤りがなかったか、②その事実に基づく意思決定の過程に不合理な点がなかったかを考慮し、善管注意義務違反の有無を判断する。

 本件では、大地震によりQ倉庫が倒壊したことが明らかになっており、役会において、総会決議の遵守は義務である等の意見や、P倉庫の売却によって損害が発生する等の意見が交わされているから、適切な情報の収集、分析、検討がなされており、①事実の認識に誤りはない。

 もっとも、Pを売却すれば、50億の損害が生じることが見込まれている状況で、現にそのような意見もなされている。また、総会の決議は、地震が起こるまえの事実に基づく判断であり、地震による影響が考慮されていない。そうすると、Pを売却するという判断は、不合理である。

 よって、善管注意義務違反があり、任務懈怠が認められる。

⑶ そして、これについて過失があり(428条参照)、その結果、甲社に多大な損害が生じているから、因果関係、「損害」が認められる。

⑷ 以上より、Aは甲社に対し、上記損害を賠償する責任を負う。

以上