何葉川は再び作戦の準備に取り掛かった。
早坂と坂町の死体が転がっていたので少し離れた位置で身を潜めた(本来ならもっと離れたかったが早坂を思うと離れるに離れられなかった)。
早坂には言いそびれたが自分が考えた作戦・・・、それは・・・
七原秋也を呼び出す。
何葉川は知っていた。
七原秋也に連絡する方法を。
絶対に政府の野郎共のしらない七原への連絡先を。
まずは携帯で電話をしたところ、あのくそ政府の鳥川という男が出てきた。そこで外部と連絡の取れる電波をパソコンから探し、そこから自参の携帯でその電波を利用し、七原を呼び出す。もうここがどこなのかは分かっている。「海遠島」だと断定した。なぜなら、昔、’’あいつ’’と来たことがあるから・・・。
何葉川は電波の捜索に取り掛かった。
「残り32人」
エリアB-5、岡の下の方に2人でいたのは東条由香理(女子16番)と渡辺汐里(女子23番)だった。
2人は小学校1年生の時に同じクラスになり、その時に仲が良くなりずっと遊んでいた。中学に入ると同じ合唱部に入り、部活が終わった後、そのままどちらかの家に泊まりに行く事が多かった。
お互いに静かめな性格なため、喧嘩はしたことがなかった。
クラスメイトもこの学年で1番仲が良いと言うほど、親友の2人だった。
その2人が今、決裂していることは誰も予想していない事だろう。
「由香理、う、、、恨まないでね」
文化包丁を持った汐里が呟いた。
「汐里・・・。どうして・・・?」
ブーメランを持った由香理が震える声で言った。
「こ・・・、こういう状況になったから・・・、し・・・・仕方・・・ないよね?」
今にも汐里は動きだしそうだった。
「落ち着いてよ!汐里!」
大声で叫んだ由香理の声を無視し、汐里は文化包丁を東条に向け、走っていった。
由香理はやみくもに手を振り回した。
偶然、汐里の手を掴むことに成功した。由香理は必死で自分に刃が向かないように汐里の手首を折り曲げようとした。体格の小さな汐里は、あっさりと由香理の力で包丁を自分の方に向けられた。
由香理の力が強すぎたのだろうか。それとも汐里が力を抜いたせいなのか。すべての髪を後ろへ持っていって縛っていて、丸出しの汐里の額に包丁がざくり、と、入っていった。
「あ!汐里!!!」
由香理は気付いた。汐里が何か喋ろうとしている。
「ご・・・ごめ・・・・・んね・・・?」
「え・・・?」
「私・・・、由香理に・・・・生き残・・・・って・・・、欲し・・かっ・・・た、の」
「え・・・?汐里?」
「が・・・、頑張っ・・・・て、い、、生き・・・残って、ね」
汐里はそう言った後、動かなくなった。
「汐里!!!!汐里!!!!」
由香理の涙は止まらなかった。
親友に裏切られたと思っていた。しかし、違った。汐里は自分にわざと殺されたんだ。
もっと冷静になっていれば、と、後悔した。
「汐里!!!!!!」
由香理は叫んだ。叫び続けた。このまま永遠に叫び続けてやろうかと思った。
しかし、ぱらららら、と言う音と共に、由香理の叫び声と、由香理の命は消え去った。
夜星綾乃(女子22番)はウージーを片手に去って行った。
「ダメじゃない。叫んでいたら。こうやって殺されるのよ」
「残り30人」