美乃屋(みのや)という、

マンションに住んでいたことがある。


まぁ、特別変わった名前でもないから、

探せばいくらでもあるかもしれない。


引っ越して間もなく電話がかかってきて、
マンション名の説明がうまく出来なくて、アタフタしてしまった。


「マンション名を教えてください」


「美乃屋です」


「どういう字ですか?」


「え~と、<み> は美しいです」


「ハイ、分かりました。では、 <の> は?」


「えーと、のは・・・。 のは・・・えーと・・・。」


「野原の、<の> ですか?」


「いえ、そんなんじゃりません。 えーと、<の> はですね・・」


ここで1度、完全に止まる。


こりゃ、困ったぞ。 <の> は、どうやって伝えればいいんだ。


     :
     :


・・・で、とっさに口から出たのが、


「あの~、よく志乃さんとかの、<の> なんですけど・・」


「はぁ・・。どちらのシノさんでらっしゃいますか?」


どちらも、こちらもないよ。 

分かってくれよなぁ~ ったく。


シノさんの「の」っていったら、この「乃」しかないだろうよ。


「え~と、ですから・・ 

 よくシノさんとかに使われる <乃> なんですけど・・」


だめだ!しばらく考えてから答えたのに、説明がまるで同じだ。


「しのさん、しのさん・・ 
 あっ、あのきゅう(及)みたいな字にちょっと似てるやつですか?」


「そそ!そうです!そうです!シノさんの <乃> です!」


だめだ!もう、志乃さんのことが頭から離れない。


とりあえず一件落着したが・・
後から冷静に考えてみると、一体「志乃さん」って何者なんだ?


会ったこともないし、友達にもそんな人いないぞ。


それにしても、ボキャブラリーが不足してるっつーか、なんつーか。


今考えたって、

「志乃さん」しか出てこないんだから、笑うしかないなこりゃ (;^_^A