NHKのおはよう日本より転載
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
2017年3月12日(日)
“愛犬との再会” 飼い主たちの思い

近田
「震災から6年がたった福島。
被災者とかけがえのない家族の一員との、ある再会がありました。」
昨日(11日)、飯舘村役場に到着した1台のワゴン。
震災後、NPO団体に預けられていたペットと飼い主との久しぶりのふれあいです。

「おかえり、おかえり。」
避難場所を転々としてきた被災者たち。
愛犬と離ればなれの生活を強いられてきました。

「マリが支えなんだよ。」
震災6年。
飼い主たちと愛犬とのつかの間の再会を見つめました。
被災ペットと飼い主 “空白の6年”
リポート:福納将之(映像取材部)

福島からおよそ600キロ。
岐阜県にある、NPO法人、日本動物介護センターです。
震災直後から、飼い主と暮らせなくなった、およそ50頭の犬を無償で預かり、世話をしています。

NPOは年に2回、福島に出向き、飼い主と愛犬との再会の機会を設けてきました。
これまでに16頭が元の飼い主に引き取られましたが、一方で、高齢のため、亡くなる犬もいて、今は10頭になっています。

NPO代表 山口常夫さん
「犬の思いからしたら、ふるさとに帰りたいだろうし、飼い主と会いたいだろうというのが当然。
最後の一頭まで返してあげたい気持ちが大きい。」

震災後、浪江町からやってきた、コーギー犬のマリ、12歳です。
このマリとの再会を、特別な思いで待ち望んでいる人がいます。
去年(2016年)暮れ、南相馬市に完成した災害公営住宅。

ここで1人暮らしをしている、鈴木竹子(すずき・たけこ)さん、88歳です。
浪江町で、息子夫婦や孫たちと8人で暮らしていた鈴木さん。

マリは、震災で亡くした息子・謙太郎(けんたろう)さんが残してくれた形見だといいます。
地元で消防団活動をしていた謙太郎さん。
地震直後、周囲が避難する中、自宅に戻り、縁側につながれていたマリを助け出します。
その後、水門を閉めるため、海に向かったところ、津波にさらわれたのです。

鈴木竹子さん
「マリを連れてきて、これがあの子の最後の形見。
最後の形見。」
震災後、避難先を転々としてきた鈴木さん。
今年(2017年)1月、ここ入居することで、ようやく落ち着いた暮らしを取り戻すことができました。
しかし、ここで犬を飼うことは禁じられています。
6年たっても、マリと暮らすことはできません。
鈴木竹子さん
「一緒に住みたい、でもそれはできない。
(マリと)いたい、でもいられない。
マリと清々と暮らしてみたい。」
一方、愛犬との暮らしを取り戻そうとしている人がいます。

福島市のアパートで避難生活を続ける、阿部廣利(あべ・ひろとし)さん、啓子(けいこ)さん夫婦です。
震災前、飯舘村で農業を営んでいた阿部さん。

その傍らにいつもいたのが、愛犬のビーグル犬、クリです。
阿部廣利さん
「わんぱくな、やんちゃっ子。
孫と同じ、そんな感じ。」
阿部さん夫婦のふるさと、飯舘村。
今月(3月)末に、村の大部分で避難指示が解除されます。

しかし、夫婦は話し合いの末、親から受け継いだ、この家を取り壊し、福島市内に一軒家を購入して、移り住むことを決めました。
阿部廣利さん
「また一からやり直していくしかない。」
クリを引き取り、新居での生活を始めるにあたって、阿部さんはプレゼントを準備していました。

手作りの犬小屋です。
今度の再会で、クリに見せるつもりです。
阿部啓子さん
「楽しみだね、今度ね。」
阿部廣利さん
「すんなり入ってくれるといいんだけど。
クリが来てからだ、これ以上は。」

そして昨日。
クリとの再会を待ちわびる阿部さん夫婦もとに、岐阜県からNPOの車がやってきました。

去年秋以来の懐かしい再会です。

クリは、いつも乗っていた軽トラックの荷台に飛び乗りました。
早速、犬小屋を見せようと、自宅へ向かいます。
阿部啓子さん
「入るかな。」
気に入ってくれるか心配です。

阿部廣利さん
「これなんだ、これなーんだ。」
阿部啓子さん
「クリのハウス。
インだ。」

阿部啓子さん
「ここいいね、入った。
また出てくる。」
阿部廣利さん
「ちょっとでも入ってくれたから、よしとするかなと思っています。」
もうすぐ待ち続けてきた、クリとの生活が始まります。

阿部廣利さん
「クリの犬小屋を持っていって、一緒に暮らす。
今日はその予行演習だね。
引き取れるという、それは一つの希望だね。
楽しみ。」

南相馬市に住む、鈴木さんのもとにも、マリを乗せた車がやってきしました。

鈴木竹子さん
「マリ、わかる?」

鈴木さんは、マリの大好物のソーセージを用意していました。
これからも会えるのは、年に2回だけ。
鈴木竹子さん
「マリ、はやいな。」
マリは、最後まで鈴木さんのそばを離れようとしませんでした。

鈴木竹子さん
「また来てなマリ、ありがとう。
これが支えなんだ、私の。
マリが支えなんだよ。
また会おうな。」
震災から6年。
愛犬との、当たり前の暮らしを取り戻したいと願う人たちです。
小郷
「マリが支えなんだという言葉が本当に胸に刺さりましたけれども、何とか一緒に暮らせないものかというふうに思ってしまいますが、当たり前の生活を取り戻すことの難しさを改めて感じました。」
近田
「鈴木さんとマリとの再会は、たった1時間だったそうですけれども、復興が進む中で、鈴木さんとマリのような願いがあることを、私たちは忘れてはいけないというふうに思います。」