最近、首都圏ではマンション用地の入手が困難になっており、マンションのデベロッパーは土地を買うのではなく、地主から土地を『借りて』分譲マンションを建て、それを販売する、ということも行なっております。
このようなマンションを借地権マンションと言いますが、借地権マンションの区分所有者は、(例えば)70年後に建物(マンション)を取り壊し、地主に更地を返却する義務があるため、70年後のマンションの残存価値は【ゼロ】となります。そのかわり、所有権マンションより15%〜20%程度安く購入することができます。また、固定資産税は(土地を所有していないので)所有権のそれより安いです。
借地権マンションの経済価値はどうなのか?これを考えます。
住む価値を貨幣額で表すことは難しいため、このマンションの部屋を貸すことを想定します。受け取れる家賃は借地権マンションでも所有権マンションでも変わらないので、それぞれについて、将来キャッシュフローを現在価値に引き直します。するとどうなるか。
前提として、借地権マンションの分譲価格8,000万円、所有権マンション価格9,500万円、受取家賃が年300万円(月25万円、管理費控除後)、固定資産税(年)所有権20万円・借地権15万円、所有権マンション残存価額1,500万円、期待利率3.7%、とします。
この前提では、現在価値は、借地権でも所有権でもそれほど変わらないことがわかります。
また、借地権マンションは老朽化による建て替えの合意形成の問題もありません。さらに、借地権マンションは受取賃料の塊ですので、インフレ耐性もあることがシミュレーションでわかります。
日本では借地権の不動産を敬遠する人がまだまだ多いため、転売しようとした時に時間がかかったり、安く売らざるを得ない可能性があることは借地権マンションのリスクです。ただ、逆の観点で考えると、借地権の不動産が安く売られている可能性も高いため、そういったものは「掘り出し物」となり得ます。借地権マンションは頭から拒否をするのではなく、バリューをよくよく考える必要があります。