脱ぐとしっかり分厚いお肉で覆われてる
かまわないよ。
それを承知で引き受けたんだ。
うちの店は気取らずに飲んでもらいた
場所でね
ある程度知った顔しか入れない。
未経験でも直ぐ慣れるだろ
よろしく、カンムギョルくん
働き始めて半月ほど経った
数席しかないバーカウンターと
ゆったりとしたフロアに設置された
ローテーブルのソファ席が二つ
それでも店が客で埋まることはなく
例えオーナーひとりで営業しても
なんの問題も無いように思えた
顔馴染みだと分かればカウンターに
寄り掛かり煙草を吹かす
この店主に経営者としてのやる気が
まるで無いことは素人の俺から見ても
明らかだった
特に今日は先ほどから降り出した
雨のせいで客足は悪そうだ
ただ過ぎてくだけの時間を想像すると
首元を締めてるネクタイが酷く窮屈な
ものに感じた
静かにジャズが流れる空間に
アイスピックで氷を削る音が響く
お互い特に言葉を交わすこともせず
オーナーが黙々と手を動かす横で
いつものようにグラスを磨いていると
じめっとした雨の匂いと共に
見知らぬ3人の男達が入ってきた
明朝まで開けられてるこのバーに
こんな早い時間帯の来店は稀なことで
いつもとは違った毛色の客たちに
静かだった店内は一気に騒がしくなる
「相変わらずヒマな店だなぁ。
親父さんが泣くぜ?」
古い付き合いなのだろうか
揶揄うように言いながら男たちは
どかっとソファに腰を下ろした
「今日は生憎この雨だ。客なんて来や
しない。お前らの貸切りにしてやるよ。」
冷やかしの言葉など一切気にする様子も
無いオーナーは適当にボトルを選ぶと
自ら席に持っていく
本気で店を閉めるつもりなのだろう
俺にグラスとアイスペールを用意して酒を
ついで置くよう指示を出し看板を終いに
さっさと外へ行ってしまった
小さく溜息を吐きながら席へ行くと
ふと男のひとりが目線を上げた
店内は薄暗く壁の所々に設置された
造り物のランプがぼんやりと周囲を灯し
その明かりに照らされた俺の顔を
男はまじまじと覗き込む
おまえ、新しく入ったバイトだろ?
「女みたいに綺麗な顔してるのな。
野郎同士で飲んでても味気ない
座って俺たちの相手でもしてくれよ。」
アホらし。。
やはりこの類の仕事は性に合わない
そんなわかり切った選択をした自分に
心の中で悪態を吐きながらも無表情で
テーブルの上の酒を注ぐ
無言でそのグラスを差し出すと
男はいきなり俺の手をつかみ
大袈裟に驚いたような声を上げた
「こいつほんとに男かよ!細過ぎるだろ
手首なんか折れそうだぜ。」
うんざりした気持ちで男を見下ろし
何でも無い事のように手を引っ込める
こんなこと。。やってられるか。
執拗に騒ぎ立てる男たちに背を向け
前掛けとネクタイを無造作に外す
とにかく不愉快なこの場から消えようと
ギターを取りに更衣室へ向かおうとした時
屋外の片付けを終えた店主が戻ってきた
まともに制服を着てない俺の格好に
オーナーは何事かと訝しげな顔をする
「なんだ?ムギョル。
まだ、帰る時間じゃないよ。」
「もぅ辞める。」
小さくはっきりと呟いた俺の言葉に
雇い主は呆れたように鼻で笑った
「そんな勝手は許されないだろ。」
他人事のように一蹴すると徐に
胸元の内ポケットに手を入れる
短期間とはいえ無意識のうちに
見慣れてしまったこの仕草
着火音ののちに煙草の先端から
ゆらゆらと紫煙が立ち上がり
嗅ぎ慣らされた臭いが充満する
「あれはうちの大切なお得意様だ。
座って酒の相手をするのも仕事だよ。」
完全に状況を理解した上で言い放たれた
上司の理不尽な要求に怒りが込み上げる
「そんなのバーテンがやることじゃ
ないだろ。。。どけよ。」
立ち塞がるようにして目の前を動こうと
しない男の真横を突っ切ろうとすると
不意に強い力で手首を掴まれた
「つっ。なんだよ。。手を離せ。」
「まったく。。想像以上の世間知らず
だな。カンムギョル。」
深い溜息と低く冷ややかな声
今まで感じたことなかったオーナーの
威圧的な態度に緊張で身体が強張る
掴まれた手を振り解こうにも
引き摺られるように連れて行かれ
男たちの間に乱暴に座らされる
慌てて立ち上がろうとすると右の男に
腕を引っ張られソファに尻もちをついた
シェイカーも振れない。愛想も悪い。
そんなお前を雇ってやったんだ。
これくらいやって当然だろ。
男達に後ろから肩を抱くように抑えられて
ロックグラスを口元に持ってこられる
慣れないダークラムの甘い香りに顔を背け
咄嗟に払い除けるとグラスの中身が溢れて
そいつの服を汚した
「こいつっ!ホント強情なヤツだな。」
それまで鼻歌交じりに楽しんでいた男が
思い通りにならないことに苛立ち
いきなりテーブルに頭を押さえ付けられ
両腕を後ろに捻り上げられる
「だから俺はヤローなんてゴメンだって
言ったんだ。」
その吐き捨てるような男の暴言に
何もせずにただ俺を見下ろしていた
オーナーは声を上げて笑った
「なに、そんな細っこいのひとりに
手こずってんだよ。」
これを使え。と先程俺が外したネクタイを
舌打ちする男に投げて寄こした
後ろ手に痛いほどキツく拘束されて
薄い肩の肉がワイシャツの下で形を歪める
「うっ。。つぅ。」
不自由な方向に曲げられた腕で何とか抵抗
しようとしたが顎を抑えて上を向かされ
強引に酒を飲まされた
何度も無理やりグラスをおしつけられ
零れたアルコールが頬を伝い
「いいなぁ、こいつ。
なんか。。エロいんだよな。」
ニヤニヤと笑う男達のエスカレートする
行動に恐怖と悔しさで身体が震え出す
そんな光景を店主は冷笑を浮かべながら
まだ吸いかけの煙草を指で弾き飛ばし
床に転がった吸い殻を靴底で揉み消した
2010 12 31 KBS 演技大賞 授賞式













