とにかく元気だったり、やんちゃだったり、小さな恋愛を人生かけて大事にしたり、他人を思いやったり。

小学生の時こんなに頭よかったかなあ 考えてたかなあ 自分ら って思った。

でもあの時はあの時で、小さな頭を大人以上にフル回転させて、
でも足りないボキャブラリーで噛みながら説明するくらいしかできなくて、
だから自分らが子供の時も、この「電脳コイル」の子供達みたいだったなあって思って。

こんな感情はいちいち考えずとも、体が勝手に感じている。
だから、大人の僕はなんの違和感も感じぬまま、彼らの世界に入ったのでした。

大人になってから、夕焼けの空にやけに感動したり、空を眺めて雲に乗りたいと考えたり、
小さな生き物を愛しいと思ったり。
そんな事を考える余裕は年を追うごとに減っていってしまう。

でも子供の頃、いちいちそんなありふれたものに感動していただろうか。
僕らは初めて見るそれらに衝撃を受けつつも、やっぱり毎日の遊びだったり、運動会だったり、
給食の献立だったり、小さな恋愛が大事だった。

だから、自然に感動し始めたのは、実は子供と大人の中間くらいのトキだったようにも思える。
子供という結晶が自分の中から薄れていく、そのなんともいえぬ気持ちに支配されて、
子供の時の、あの、大人に守られて心に余裕があった時の夕焼けが堪らなく懐かしくて、
それで外を歩いてみて初めて気づく、あの時の夕焼けにまだ出会える事もあるのだなあと、
こんなに自然というものは綺麗だったのかと。それが最初なのかもしれない。

でも大人になって、そんな周り周って気づいた大切な事も薄れて消えていってしまう。
それが消えてしまったら、残るのは生活だけ。
きらびやかな夕焼けと、夕焼けに光る花々に彩られていた世界は
灰色の粘土のようなどっしりと、変化の無い、時間の流れの無い世界に変えられてしまうのだ。

そんな時に、この物語と出会うとよいかもしれない。
きらきら輝く、まっすぐで変幻自在なことも達の純粋なファンタジー
手が届かないような美しい物語が、自分達がいた場所を思い出させてくれるから。