「長野くん!Aクラスの護衛職種からの速報!死神族のVクラスが地界に降り立ったから、俺らVクラスに地界に行って欲しいって知らせが来た」

どうしてこういう時に限って死神族は問題を起こすのだろうか。
怒りすら湧いてくる。
こっちは身体の限界と戦っているというのに。
けれど、そんなことは言っていられない。
井ノ原たちにも自分の体調不良を話していないんだ。
体調不良を言い訳に無視する訳には行かない。

「分かった。健ちゃんは井ノ原呼んで?地界に行く準備するよ」

『了解』と言って、講堂を出て行った。
時間も経たず井ノ原も講堂に集まり、ようやくVクラスが揃った。
大聖堂を飛び出し、天界入口の雲車に乗って地界へ降りた。

「今回は田舎だねぇ。すぐ傍に山あるし」

そう。
死神族が降りた場所は田舎。
ド田舎と言っても過言ではない。
集合住宅やビルがなければ、人も少ない。田んぼや沢山の針葉樹で覆われた山しかない。
都会より人が少ない分、守りやすくはある。

「あっ、いた!死神族のVクラス!」

雲車から見下ろすと、既に人間を狩っている死神らがいた。
武器を振り回し、そこら中に血が飛び散ってる。

「なぁのくんは死神族のリーダー止めて?健はモヤっとボールを振り回してる男」

「井ノ原くん、いい加減『モーニングスター』覚えて。モヤっとボールじゃないから」

そんな井ノ原と健ちゃんの漫才はさて置き。
雲車から降りた俺らは、それぞれの死神の元へ向かった。

「またお前らか」

大鎌を構えて威嚇体制に入る坂本の前に出る。
今にも人を殺めそうな目付きでこちらを睨んでいる。

「また・・・、罪のない人間、を狩ってるようだから、止めようと思っただけだよ」
 
「それが邪魔と言ってるのが分かんないのか!!」

大鎌を振り下ろし、それを間一髪で躱す。
だが、いつもより動きは鈍い。
風邪を引いているからか、素早く動けない。
それに気付いていないらしく、坂本は薙ぎ払うように大鎌を振った。
これも間一髪で躱すが、どうも上手く躱せない。
早くも体力が奪われていき、反撃も出来ずただ躱すのみ。
通常より攻防の振り幅が狭い。
これ以上は身が持たない。
上体を逸らし、坂本の鎌を躱したその時だった。

ザクッ!

胸元のローブ紐を切る音が響いた。
見下ろすと、井ノ原が自ら名を上げて相手していたはずの男がローブ紐を切り裂いていた。
はらりと虚しい音を立てて、ローブマントは地上に落ちた。

「・・・えっ?」

目を見開いて、岡田を見つめる。
一方の岡田は、恨みの篭った目で俺を見つめ返した。

「これであんたは終わりや」

静かに低い声で呟く岡田の声を最後に意識を手放した。