今回紹介する作品は
1961年(昭和36年)新東宝
「恋愛ズバリ講座 第二話 弱気」
石川義寛監督
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あらすじ
ある田舎に日本初の原子力発電所が建設される噂で、村中大騒ぎとなった。
バスから降り立った男を東京の原発建設査定官と思い込み、村人総出で歓待するが、この男は役人とは無関係だった。

第二話は役人と勘違いされた男の話です。
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小池俊一(菅原文太)
村会議員の息子との結納の話の為に帰った村長の娘(池内淳子)を追って村にやって来たが、生真面目そうな風体なので役人に間違えられる。
この作品の見どころは文太さんの生真面目でヘタレな演技ですが、これが意外と上手いんです。
これまでの二枚目な役では、演技が固くてイマイチ魅力を出せていませんでしたが、これは自然体で演じていて良かったです。
個人的には、これが新東宝での文太さんの代表作だと思います。

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村長の娘・ミヨ子(池内淳子)
気弱な文太さんに嫌気がさして村に帰っていたが、村まで追っかけて来た文太さんを見直して、よりが戻ります。
文太さんと池内さんは似合ってるコンビだと思うのですが、「黒い乳房」とこの作品ぐらいなんですね。

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強欲な三人組 村会議員(沢井三郎) 村長(林寛) 助役(石川冷)
新東宝でお馴染みのベテラン俳優です。

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原発建設現場を下見に行く馬車
中川信夫監督の「ひばりヶ丘の対決」でも使われた馬車ですね。

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原子力発電所を自分の土地に建設させたい三人は、自分の女を文太さんに差し出して売り込もうとしました。
沢井三郎村会議員は芸者の若杉嘉津子さんを。
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石川冷助役は後家の山下明子さんを。
山下さんの後家や妾役は絶品の上手さです。
代表作は中川信夫監督「地獄」の養老院長(林寛)の妾役。

石川義寛監督は長年中川信夫監督のチーフ助監督だったので、中川組の俳優が多く出ています。
林寛村長は自分の娘(池内淳子)でした。

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元来の目的である池内さんとの付き合いを父親に認めさせる事は棚上げになってしまい、すっかり役人に間違えられている文太さん。
うじうじしている文太さんを池内さんは叱咤します。

すると、「勇気の出る薬が欲しい」と文太さんが言い出します。
勇気の出る薬とはキスの事。こんな薬ならいくらでも欲しいです(笑)

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役場に今日査定官が来る電報が届けられました。昨夜の役人は偽者だと叫ぶ林寛村長。
そっちが勝手に間違えたのにね。
しかし文太さんに裏金まで渡していたのです。

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「勇気の出る薬」で勇気が出た文太さんは、林寛村長に二人の付き合いを認めるようにお願いしますが、そんなことを聞き入れる訳がなく、泥棒金返せ言われます。
その言葉に逆ギレした文太さんは、貰った札束をまき散らして立ち去りました。

その直後に芸者を連れて車から降りてきたのが、建設省査定官・小池栄三郎役の沼田曜一さん。
なんか悪代官のような役人(笑)

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主役級の俳優がチョイ役で出演していました。
青年団長役の宇津井健さん

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バス車掌役の大空真弓さん

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バスで駆け落ち途中で「勇気の出る薬」の効果が切れてしまい、急に弱気になった文太さんは、林寛村長の居る村へ引き返したのがオチでした。

あとがき
中川信夫監督が得意だった田舎の風景・風習の再現も見所ですが、何といっても文太さんの演技ですね。
こういう役が違和感なく演じられたのは意外でした。
やっぱり天性の素質があった方でしたね。

それから、原発建設に村人全員が諸手を挙げて賛成というのはどうなんでしょう。
これはちょっと驚きました。


最後に、ネットで見つけた文太さんと池内さんのスチール写真を貼っておきます。