今回紹介する作品は
1974年(昭和49年)東宝
「喜劇 だましの仁義」
福田純監督
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あらすじ
刑期満了した詐欺師の川本純平(谷啓)は、四年ぶりに我が家へ帰ってみると、かつての棲み家は跡もなく、新しいマンションの工事が着々と進行中であった。
いきり立つ純平に大家は、文句は「総合商社角紅」に言え、と開き直った。

谷啓さん主演の東宝喜劇映画ですが、この頃になると「東宝カラー」はあまり感じられず、どちらかと言うとダイニチ映配時代の大映に近い作品になっております。

※オリジナルはシネマスコープですが、この作品は1999年にサンテレビで放送されたもので、画面がテレビサイズ(サイドカット)になっておりました。
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川本純平(谷啓)
結婚詐欺なんてちんけな事は大嫌いで、あくまでも詐欺の王道にこだわる男です。
しかし、私生活では恋人(稲野和子)に去られ、二人の間に出来た娘(本田みちこ)も知らずにいました。
谷啓さんのコメディチックな場面は少なく、絶えず恋人(稲野和子)の事を想っている男でした。
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松本議二(岸部四郎) あだ名がポルノ
結婚詐欺師だったが、谷啓さんと知り合ってから結婚詐欺を辞めて行動を共にします。
この顔で結婚詐欺師とは(笑)
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石山権太郎(小沢昭一)
かつて谷啓さんと詐欺仲間で、現在は大阪でストリップ小屋を経営。
山口県での大仕事に必要な人材なので、谷啓さんに頼まれて再び詐欺師団に参加。
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村崎銀子(安田道代)
美貌で男を騙す詐欺師、峰不二子風キャラです。
結婚詐欺師の岸部さんを逆に騙したのですが、再び出会ってから一緒に行動します。
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長島仙吉(坂上二郎)
谷啓さんを捕まえた刑事だったが、定年退職して山口県防府近くの役場の守衛に転職
谷啓さんとは気心が知れて谷啓一味の詐欺を咎めるが、相手側の方が悪辣なので、最後は味方になります。
人の良い刑事役は、この頃の二郎さんにピッタリな役柄です。
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この映画は、田中角栄の日本列島改造論や金権政治の風刺の意味合いがあります。
まず谷啓さんは代議士に変装して、自分の住み家を潰した上、防府にコンビナートを建設しようとする憎き「総合商社角紅」の赤沢部長(名古屋章)に近づき、得意の話術を駆使して金を巻き上げます。
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そして本番
防府の近くにある漁村に行き、町長(太宰久雄)を騙してコンビナート誘致の政治献金(裏金)を略取する。
小沢さんは金権政治家の山田代議士と瓜二つなので必要だったのです。
後に本物の山田代議士も登場します。
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この漁村には谷啓さんの元恋人・川本初江(稲野和子)が住んでいて、谷啓さんと再会します。
しかし、時の流れは戻る事が無く、再び別れます。
稲野さんといえば「ザ・ガードマン」ゲスト最多出演者で悪女役ばかりでしたが、いい人役は初めて見ました。
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谷啓さんの娘・信子(本田みちこ)
幼稚園の先生をしていますが、コンビナート建設反対運動のリーダーで、東京の角紅本社までデモ行動をします。
ここで谷啓さんと出会いますが、親子だと分かりません。
結局親子の対面をせずに終わります。
安田さんより、こちらの方がヒロインなんですね。
漁村では新聞記者に化けた岸部さんとロマンスもあります。
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小沢さん経営のストリップ小屋で踊るストリップ嬢百合(荒砂ゆき)
バッチリ裸も映りますが、アメブロ基準に抵触するので顔だけ(笑)
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鉄道シーンは、防府駅に到着する581系特急「つばめ」
「つばめ」の文字が見えにくいですが、最大の見どころです。
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防府駅舎
特急「しおじ」「つばめ」の宣伝看板が掲げられていますね。
1年後には山陽新幹線が博多まで延び、「つばめ」は廃止されましたので、この時期に撮って良かったです。
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略取した1億円は、結局安田さんが独り占めしてしまいました。
心底女狐だった安田さん。
こんな悪女役は初めてだったのかな?


あとがき
オリジナルの上映時間は84分ですがサンテレビでは72分だったので、カットされて意味が分からない場面もありました。
防府で安田さんが何をしたのか映りませんでしたし。

田中角栄の金権政治の風刺も効いて、作品的に面白いと思いますが、喜劇を付ける程喜劇っぽくないのですよ。あえて喜劇とタイトルに付けたのは、金権政治の風刺なんですかね?

是非完全版を観たいのですが、CSでは未だ未放送です。
最近のCSは同じ映画のリピートが多く、レア物の放映率は低くなりましたし、谷啓さんが亡くなった時も放送しませんでしたので、観るのは難しいかな。