今回紹介する作品は
1960年(昭和35年)新東宝
「少女妻 恐るべき十六才」
渡辺 祐介監督
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あらすじ
盛り場にあるビート喫茶を拠点に未成年の少女達が、やくざの徹底した監視の下で売春を行っていた。
ユキ(星輝美)は、そこから逃げ出そうとするが、組織の監視の目は厳しく手をあぐねていた。

新東宝倒産後も、東映・松竹で活躍した渡辺 祐介さんの初監督作品です。
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冒頭で映る、セーラー服でバスケットボール遊びをする女子高生達!ではなく、少女売春婦達で、
商売用のコスプレです。
きわどい映画タイトルだし、性描写満載の映画と間違えそうですが、内容は青春映画なんですね。

一人の少女には一人のチンピラが偽装夫婦の形で少女を監視し、情が移らないように一カ月毎に夫役変えるというアイデアは、凝るタイプの渡辺 祐介監督らしいです。
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小山ユキ(星輝美)
戦災孤児の為、満足に学校に行けなかったので、同世代の女子高生に敵意を持つが、同じ境遇のチンピラ・並木五郎(鳴門洋二)を好きになったのをきっかけに組織を抜け出そうとします。
輝美さんは「思春の波紋」で主役は経験済みなんですが、「思春の波紋」を含め主演作品は全て紛失しており、この作品が唯一観ることが出来、彼女の代表作でもあります。

少女売春する女の子は、現在ならば単なる不良の認識ですが、当時の世相は色々複雑な事情があったのかもしれません。誇張して描いていると思いますけど。
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客と一夜を過ごして目覚めた輝美さん。
この表情が好きです。
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並木五郎(鳴門洋二)
主に客を恐喝する美人局担当のチンピラだったが、輝美さんと意気投合して、組織から抜け出そうとします。
鳴門さんと輝美さんは、この作品辺りからコンビを組むようになります。
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光江(三条魔子)
少女売春婦の一人だが、お金を貯めて将来は組織を牛耳ろうと考えています。
当時の三条さんらしいキャラです。
「恐るべき十六才」のタイトルですが、実際に十六才なのは三条さんなので、もしかしたら主演の構想もあったかもしれません。
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組織のマネージャーで仕切っている井崎(御木本伸介)と少女売春婦のリーダー・マリ(扇町京子)

御木本さんは冷酷非情なキャラで、新東宝時代は最も極悪な役柄でしょうね。
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銀子(小畑絹子)
現在もフリーの立ちんぼをしています。
神戸でかつてやくざの黒木(宇津井健)との恋に破れて娼婦に身を落としたという過去があり、若い二人の姿に昔の自分たちの姿を見て、若い二人の味方になり、組織から抜け出す協力をします。
しかし、御木本さんにバレたので射殺されてしまいました。
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三宅(天知茂)
神戸で鳴らしたフリーのやくざで、小畑さんと宇津井さんとは知り合いだった。
買春組織の用心棒兼監視役として雇われるが、自己流を通します。
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劇中はサングラスをかけている事が多く、当時異様に痩せている天知さんでしたので、なんとなく不気味さを漂わせているキャラでした。
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組織から逃げようとして捕まったカップルの口に、カミソリを銜えさせた上にキスを強要し、口中血まみれになった所で、最後は天知さんに射殺されてしまいます。
これもまた渡辺監督のアイデア。
かなりサディスティックなシーンですが、こういう所は後に東映で使ったのでしょうね。
因みに女性は松原由美子さんです。
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このシーンを少女達に見ることを強要し、思わず顔をそむける彼女たち
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組織の監視の目が厳しいので、おどおどしながらデートをする二人。
作品の前半は少女たちがあっけらかんとしていて、客のオヤジにカマかけてる痛快なシーンなどがあるのですが、中盤からはマジモードだけになってしまいます。
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黒木(宇津井健)
天知さん同様、神戸で凄腕の用心棒だったが、今ではやくざ稼業から足を洗って、河口湖畔でボート屋を営んでおり、小畑絹子さんのもとを訪れて一緒になろうと言いますが、絹子さんに拒まれます。
しかし、絹子さんの手紙を受け取り若い二人を匿います。
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天知さんと御木本さんは河口湖に出向き、二人を引き渡すのを要求しますが、天知さんは拒否する宇津井さんを撃とうする御木本さんを射殺しました。
天知さんは絹子さんが好きだったのでしょうね。
その後律儀にも御木本さんとの契約通り、天知さんは宇津井さんと射撃対決して、天知さんは死亡し、宇津井さんは自首しに行ってしまいました。
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それを呆然と見る輝美さんの姿でEND
暗雲だだようシーンで終わってしましたが、実は渡辺監督の次回作で二人の将来が分かるんです!

あとがき
新人クラスの二人だけでは心もとないと思って、主演級3人を出演させたのは理解出来ますが、
作品のハイライトが天知さんと宇津井さんの対決になってしまい、主演の二人がそっちのけになってしまったのは、いかがなものか。
そこは残念ですが、輝美さんは主役のユキ役を良く演じてくれました。

渡辺監督はこの作品に満足した様で、後に新東宝会で再開した輝美さんに「少女妻 恐るべき十六才」の輝美さんの大きなパネルを自宅に飾っていると言いました。

他の映画関係者にも好評だったらしく、新東宝倒産後に輝美さんが東映に移籍出来たのは、東映の関係者が輝美さんのファンで、東映上層部にプッシュしてくれたそうです。