今回紹介する作品は
1961年(昭和36年)大映
「投資令嬢」
枝川弘監督



あらすじ
東和大学の投資研究会メンバーの三人娘は、大学の講義そっちのけで株式投資に夢中です。
リーダー格の牧村チズ子(叶順子)は、中国の国連加盟が実現すると予想し、関連銘柄のOK肥料株を買う為に資金集めを考える。

山一證券協賛で、株式投資の話をふんだんに取り入れた、大映流ラブコメです。



大学の講義そっちのけで、ラジオの株式速報を聴く、牧村チズ子(叶順子)三枝みさを(野添ひとみ)北川晴美(宮川和子)
以前紹介した「セクシー・サイン 好き好き好き」で川口浩にアタックした3人娘と全く同じです。
ただし、宮川和子さんは一歩引いた存在でした。



牧村チズ子(叶順子) あだ名はチーズ
大学生だが、実家は古本屋で彼女はそこの看板娘。
彼女目当てに学生たちが古本屋に押しかけるが、ツンデレのチーズは全く相手にしません。
叶順子さんの女優生活で最もモテた役かもしれません。



そして、叶さんはアップのシーンが大変多いので、叶順子さんファンは必見の映画でしょう。



三枝みさを(野添ひとみ)
ツンデレ度や好みの男性は叶さんと同じですが、今回は脇役なので叶さんに全て負けてしまいます。



鈴木教授(根上淳)
典型的な学者肌で、頼りない所が株狂の二人に気に入られます。



高価な古本が欲しいが、手が出ないので諦めて帰ろうとする根上さんに、古本の原価まで教えて値段を下げさせた叶さん。
しかし、根上さんには、結婚を前提にした彼女(山内敬子)がいたのでした。
右は父親役の松村達雄さん。



劇中に何度も登場する山一證券の投資信託のパンフレット。



結婚後の資産運用で山一證券を訪れた3人。
ここまで来たら、山一證券が協賛だけしているとは思えません(笑)
かなりの額を出資していると思います。



伝説の相場師で、現在は株式評論家の大石伝兵衛(東野英治郎)
叶さんのお見合いの相手の父親です。



投資研究会メンバーの宮川さんの父親が負債を抱えたので、東野さんに50万円融通してくれと頼む叶さん。
男気ならぬ女気がある所を見せます。
しかし、担保に出したOK肥料株は駄目と断られたので、OK肥料株の価値や投資方針を巡って大口論!!
株式ハウツー色が強い映画ですが、ここは見所です。



大石伝兵衛の息子で建設技師の研次郎(大瀬康一)
月光仮面の後に大映入りした頃です。

叶さんとは前半で知り合っているのですが、叶さんが見合いに気乗りがしないので見合い写真を見ず、途中まで見合い相手だったと分からなかったのです。



ラスト近くで叶さんがお見合いをしたのは、渥美清でした。
渥美さんの大映出演は大変珍しいですね。



叶さんは渥美さんを振って、大瀬の元に行くお決まりの結果で終了。



あとがき
投資がストーリーの作品は、主人公が大損するのがお決まりですが、
山一證券協賛作品なので、全てハッピーエンドで終わりました。

そしてこの作品に出てきた銘柄は山一證券のアドバイスがあったでしょうから、運用結果を見てみます。

叶さんが104円で買ったOK肥料株は、東野さんのアドバイスで202円で売却しました。
もし、このまま持ち続けたらですが、中華民国(台湾)に代わって、中華人民共和国が国連の代表権を獲得したのは、この映画の公開から10年後の1971年。日中国交正常化は、その翌年の1972年ですから、アドバイスを聞いて売却したのは正解でした。

次に、根上さんが買ったであろう、割引債や元金保障で年7.4パーセントのサイケンオープン。
これも高度経済成長期で値下がりはなかったですね。

しかし、大瀬さんの赴任先の南ベトナムで株を買う話は、この映画直後に、ケネディ大統領は南ベトナムに軍事顧問団を派遣。あとは、ズルズルと深みにはまって、ベトナム戦争の泥沼化ですからね。紙切れ同然になってしまったでしょう。

「投資令嬢」に全面協賛した山一證券は、不正会計(損失隠し)事件後の経営破綻で1997年に廃業。

「投資令嬢」を制作した大映は1971年に倒産。

最後に、大瀬康一さんを取った叶順子さんですが、渥美清さんにした方が投資として成功したでしょう(笑)