今回紹介作品は
1959年(昭和34年)日活
「ゆがんだ月」
松尾昭典監督



あらすじ
神戸のやくざ立花組の桂木正夫(長門裕之)は、兄貴分(高原駿雄)が組の者から口封じで射殺されたのを目撃するが、組長(三島雅夫)から金を握らされて黙らされていた。
しかし、思うところがあり、その後組を裏切ります。

長門裕之さん主演のサスペンス映画ですが、全般に渡って細かくロケが行われており、特に前半の神戸ロケが見所です。



桂木正夫(長門裕之)
組長から金を握らされ、兄貴分の一件は黙っていましたが、兄貴分の妹に出会ってから考えを変え、知り合いの新聞記者(大坂志郎)に打ち明けます。その為実行犯は逮捕されますが、本人は組の報復を恐れ、東京へ高跳びします。



江田奈美子(南田洋子)
長門さんの情婦です。一緒に神戸から東京へ移り住みますが、東京では麻薬タバコの中毒にされた上に香港に売り飛ばされそうになるし、長門さんは兄貴分の妹に気が入ってるし、大変可哀想なキャラですね。



木元(大坂志郎) 日東新聞の記者。
大坂志郎さんが兄と弟の二役を演じ、写真は兄の東京勤務の記者。
兄は弟と違って、少々おとぼけ気味のキャラです。



立花組組長(三島雅夫)
長門さんに裏切られ、実行犯の組員が逮捕された事に怒り、長門さんを消す為殺し屋を差し向けます。



由良(神山繁)
その殺し屋が神山さん。
しかし、この殺し屋がちょっと変わっていて、絶えず童謡の「赤とんぼ」を口笛で吹き、相手にもチャンスを与えると言って、拳銃での一騎打ちを要求します。
一騎打ちまでのサスペンス感は良かったですが、一騎打ちで素人同然の長門さんにあっさりと負けたのは拍子抜けしました。


そして、ここからが本番です♪


神戸駅5番線に到着した、EF58牽引急行「銀河」
神戸駅での「銀河」は超貴重な映像です。



神戸駅西口の降車専用改札口
普通撮影には中央コンコースにするはずですが、こちらを使うとは!

この降車専用改札口、晩年には乗車も可能になりました。



降車専用改札口の手前に見える階段、滅茶苦茶懐かしいです!
この階段はハーバーランド建設に伴う駅舎改築の為に、取り壊されました。

そして、階段を降りてきた女性は!


殺された長門さんの兄貴分の妹・米田文枝(芦川いづみ)
東京のトクホン勤務で、兄の葬儀の為に神戸入りしました。
いづみさんが神戸駅のロケに来ていたとは嬉しいですね。

神戸駅前の風景が映っているのは、大変貴重で嬉しいのですが、神戸の玄関口とは思えない程地味ですね。
この頃はまだ三ノ宮駅と乗降客数を競っていたはずなのに。



葬儀後、母親へのお土産に元町の大丸神戸店でお買物。
神戸市電が見えますね。
母親へのお土産にしては買いすぎなんじゃ?



買物だけではなく、神戸港遊覧船に乗った二人。
素朴な遊覧船も貴重映像ですが、奥に見えるのが川崎重工のガントリークレーン。
かつてはここで軍艦を建造していた場所ですが、今はもうガントリークレーンはありません。



そして二人は摩耶ケーブルに乗車



その後、摩耶ロープウェイで摩耶山山頂へ。
いづみさんは葬儀の為に神戸に来たのに、無理やり観光をしている感がありますが、大丸での買物を含めてタイアップなのでしようね。
今となっては資料的価値は大きいですが。



東京のいづみさんの自宅で、いづみさんと婚約者役の赤木圭一郎さん。

長門さんが組に狙われるリスクを負ってまで真相を告白したのは、「正義漢」といったカッコいい事ではなく、いづみさんに対して下心があったからなのです。
東京で殺し屋に狙われている最中、いづみさんに婚約者を紹介されたガッカリ感は半端ないです。
長門さんは、そそくさといづみさん宅を飛び出し、その後いづみさんは映りませんでした。




最後に鉄道シーンをもう一つ
EF58牽引(青大将塗装)の特急
掲げているヘッドマークが小さくて分かり辛いのですが、おそらく「つばめ」と思います。


あとがき
作品の内容から「ゆがんだ月」は白黒の方が雰囲気が出ていたと思いますが、急行「銀河」や神戸駅西口・川崎重工ガントリークレーン等、今となっては資料的価値があるシーンが多いですので、カラーで撮って欲しかったな!