今回紹介する作品は
1960年(昭和35年)新東宝
「爆弾を抱く女怪盗」
土居通芳監督



あらすじ
東洋貿易にあるダイヤモンドを狙う女ボス・三ノ宮雅子(高倉みゆき)率いる一味は、列車内で専務(岬洋二)の鞄を奪おうとしたが、鉄道公安官の朝倉伸男(菅原文太)に阻止される。

高倉みゆき主演の女怪盗モノですが、土居通芳監督はデビュー作が高倉さん主演の「不如帰」で、以後高倉さんの主演作品を中心に撮る事になります。
私自身は土居監督の作風は好きなのですが、高倉さんが主演ということで、絶えず大蔵社長が作品に介入することになります。
大蔵社長のお気に入り監督だったにせよ、土居監督もストレスが溜まったでしょうね。
そして、これが土居監督最後の高倉さん主演作品になります。



三ノ宮雅子(高倉みゆき)
北支開発の三ノ宮伯爵令嬢だったが、終戦直後、父親が中国人に襲われ、その場に居合わせた社員の立花竜太郎(沼田曜一)に財産を奪われてしまいます。
高倉さんは、立花に復讐するために、かつての部下や執事を集めて一味を結成します。

高倉みゆきさんは、東宝・東映と渡り歩きましたが、芽が出ず、女優を辞めようと思っていた時に、大蔵社長にスカウトされ、いきなり昭憲皇后役に抜擢されます。
その後も大蔵社長の肝入りで数々の主役を任されました。

高倉みゆきさんといえば、大蔵社長の愛人だった話ばかりが伝えられていますが、実は愛人ではなく、大蔵社長の片思いだったのが真相だった様です。
証拠ですが、その頃高倉さんは後藤浩滋さん(藤純子さんの父親)と付き合っていたとのこと。
※星輝美さんが結髪の女性から聞いたと証言しています。

でも、大蔵社長が記者会見で愛人だった事を認めてしまったり、アラカンさんが著者に載せたりしたので、愛人で無かったことは中々払拭されませんね。

高倉さんは「心やさしい、いい人なんです。」と星輝美さんが証言されていますので、そういう所をクローズアップされても良いと思うのですが…

小柄な方ですが、女スパイ役や男達を牛耳る今回の女ボス役も似合っていると思いますね。



朝倉伸男(菅原文太)
鉄道公安官で鞄を奪おうとした高倉さんを取調べ中に、睡眠液を浴びせられて取り逃がしてしまう失態を演じ、鉄道公安官を辞職します。
その後、高倉さん一味を付け狙ううちに、仲間になってしまいます。
このあたりが新東宝らしい強引な展開です(笑)

ただ、文太さん、セリフ回しが硬いというか、少しぎこちないんですね。
こういう感じが新東宝時代の文太さんなんです。



ヘリコプターに乗る高倉さんと文太さん。
二人のツーショットもこれが最初で最後でした。
文太さんの着こなしは新東宝随一だと思うのですがね。



星野久美(三条魔子)
高倉さんの部下(九重京司)の娘で、父親の命令で東洋貿易に事務員として潜入しています。

三条さんは大型新人ということで、売出しも奇をてらってデビュー作の「金語楼の海軍大将」からこの作品迄「シークレット・フェイス」として「名無し」で出演したと伝えられています。
しかし、この作品ではシークレット・フェイスと書かれた後に三条魔子とクレジットが入れられていますし、前作の「地下帝国の死刑室」も三条魔子のクレジット入りでした。



三条さんは、ただの事務員だけに留まらず、幹部の吉沢文雄(岬洋二)と「良い仲」になって積極的に諜報活動をします。
当時、まだ16歳の彼女ですが、デビュー当初から積極的なキャラだったのです・



中山競馬場で密会する高倉さんと三条さん。



千葉隆志(吉田輝雄)
東洋貿易の社員だが、悪事が嫌になり会社を辞めようとします。

そんなに活躍する場面が無かった吉田さんですが、「女体渦巻島」で鮮烈に主役デビューする前の貴重な映像です。



実は、吉田さんと三条さんは恋人だったのです。
新東宝時代の吉田さんは、三原葉子さんとのコンビのイメージなのですが、三条さんとのコンビも多いのです。
吉田さんと三条さんは7歳年の差がありますが、この時から三条さんの方が積極的でした。



立花竜太郎(沼田曜一)
三ノ宮伯爵の財産をどさくさ紛れに奪い、それだけでは飽き足らず、やくざ会社を設立します。
沼田さん一流の粘着質な個性が出た悪党です。



マリ(三原葉子)
沼田さんの情婦だが、三条さんや吉田さんの様子がおかしいと感じ監視します。
しかし、他の作品にも出演した関係からか、途中から出なくなってしまいました。



高倉さんの部下、佐伯慶一(九重京司)と島崎譲司(御木本伸介)
九重さんの役は、三ノ宮伯爵の元執事で、三条さんの父親
御木本さんは、途中で高倉さんを裏切り、高倉さんを襲います。



京浜急行400系と一緒に写っているのは、東洋貿易社員・河島高光(渡辺高光)
渡辺さんは新東宝の悪役キャラでお馴染みですが、新東宝倒産後は俳優と並行して、殺陣師としても活躍しました。



作品のハイライトはダイナマイトを巻き付けられた、高倉さんと三条さん。
「爆弾を抱く女怪盗」の由来は、このシーンから来ているのですが、てっきり高倉さんが、「自爆テロ犯」の様に爆弾を巻いて、沼田さんを脅すものと思っていました。(笑)



ダイナマイトが爆発する寸前で、文太さんが二人を救出し、沼田さんら悪党一味は海上保安庁に連行されて、めでたしめでたし。

制服姿の文太さんと救出された高倉さん。
ただ、文太さんが、鉄道公安官を退職後、どういう立場になったのか描かれていないので、このシーンは違和感ありましたが。

新東宝の場合は、意図的に「ツッコミ」を入れられるサービスをしてくれていたのかも知れませんね(笑)