今回紹介する作品は
1959年(昭和34年)新東宝
「猛吹雪の死闘」
石井輝男監督



あらすじ
粕谷五郎(宇津井健)は、学生時代にオリンピックに出場したことのあるスキーの名手だったが、フィアンセの千代子を雪崩で失って以来、山の遭難防止に挺身している。
ある日、都会の4人組が山越えの案内を粕谷に依頼して来たが…

厳冬期の蔵王で一か月に渡りロケを敢行した、石井輝男監督の山岳アクション物です。



粕谷五郎(宇津井健)
正義感のある山男で、この役も宇津井さんにうってつけですね。
しかし、石井監督のデビュー以来ほとんどの作品で主演を演じて来ましたが、これが最後の石井監督出演作品になりました。



桂千春(星輝美)
企画が佐川プロデューサーなので、また石井作品に出演です。
今回の輝美さんの役は、登山口にあるスキーハウス「麓」の娘千春で、一級の免状を貰ったら冬山の指導員になるつもりの女の子です。



スキーを担いで山小屋に行く宇津井さんと輝美さん。
まるで大人と子供ですが、翌年には二人が恋人になる作品があるんですね~
輝美さんのスキーシーンもありますが、本人は全然滑れなくて、地元の男の子の吹き替えだそうです。



そこへ、4人組が山越えの道案内を依頼します。
その4人組とは!?



双見昭子(三原葉子)
東京のクラブの女で、3人組に接待旅行の為に連れてこられたが、実は逃走のカモフラージュ要員だったのです。
三原さんは今回の役が石井監督作品初のヒロインで、その後石井監督が新東宝を去るまで、ずっとヒロインを続けます。
粕谷五郎のフィアンセ大塚千代子役も三原さんが演じます。



菅野欣也(菅原文太)
宝石強盗団の一人、それだけでは無く宝石を独り占めしようとしたり、仲間を崖から突き落したりして、悪辣の限りを尽くします。
新東宝時代の文太さん最大の悪役なんですが、実は文太さんの悪役は石井監督作品の三作品だけなんですよね。
この三作品がよく取り上げられるので、新東宝時代の文太さんは悪役が多いと思われていますね。



宝石強盗団ボス・大平剛(大友純)と峰山浩三(宗方祐二)
大友さんは石井作品には無くてはならない一人ですが、宗方さんも常連です。
この宝石強盗団は「網走帰り」なのがツボです。



向かいの座席は文太さんと三原さんでした。
この車内は何時も使われるセットです。



山小屋で三原さんに言い寄る文太さん
実は文太さんのキャラ設定というか台詞回しが変なのです。
粗っぽい要素もあれば、二枚目調というよりオネエ調に近い台詞もあったりします。

その後の石井監督作品には、唐突にオネエ調になるシーンがよくありますが、その先駆けなんでしょうか。
しかし、文太さんがこの演出を理解していない様で、なんかちぐはぐになってしまっています。
そのせいか、その後の文太さんは石井組から外されてしまいました。



鉄道シーンはC51形蒸気機関車
山形駅に到着するシーンです。



崖を登るサポートをする宇津井さん
このシーンが見せ場でして、文太さんが登る時に、三原さんがボスの大友さんを突き落としたと言い、「あんな男、殺してしまえばいい」と進言し、怒った宗方さんがナイフでザイルを切ろうとすると、宇津井さんはそれを振り払います。
その後の台詞「ザイルは切れないんだ、山の男の約束なんだ」
この台詞にジーンときましたね。
宇津井さんの俳優人生でも屈指の名セリフだと思います。



事件が解決して、蔵王山頂で先に逃げ出した輝美さんと喜びを分かち合う、宇津井さんと三原さん



最後に輝美さんのお気に入りの一シーン音譜

輝美さんは今回も石井監督によく怒られたそうですが、それよりも厳冬期の蔵王で一か月に渡ってロケした方が辛かったのです。
その訳は輝美さんは極度の寒がりなのです。
おそらく、輝美さんにとって最も辛い思い出だったでしょう。


文太さんの台詞回し等、一部でおかしな場面もありますが、猛吹雪の蔵王のアクションシーンは、後の「網走番外地」を彷彿させる所もあり、見ごたえある作品です。


「猛吹雪の死闘」予告編動画を貼っておきます。