今回紹介する作品は
1963年(昭和38年)日活
「その人は遠く」
堀池清監督



あらすじ
東京に母親と二人で住む浪人生の岡田量介(山内賢)宅に、父親を亡くした京都の遠縁・細川奈津子(芦川いづみ)が同居する事になった。

藤原審爾さん原作の映画化で、山内賢さんと芦川いづみさんの微妙な関係を描いています。 



主人公の岡田量介(山内賢)
受験勉強中なので、突然同居する事になった奈津子を煩わしいと思っていたが、会った途端に心情が劇的に変化します。
そらそうでしょう(笑)



細川奈津子(芦川いづみ)
資産家の父親が突然亡くなり、独りぼっちになったので、花嫁修業を兼ねて上京します。

この年代のいづみさんは着物の方が似合いますね。



量介と対面したいづみさん。
洋服だと、少し若く見えますね。



親戚一同の計らいで、いづみさんは大阪の大学講師の大沢茂好(井上昭文)を紹介され結婚します。



大学に合格した量介がいづみさんに会いに大阪に行くと、庶民的ないづみさんが居た。

※劇中で、いづみさんは上京時には標準語、大阪では大阪弁と使い分けていますが、それまで京都から出たこともない彼女が言葉を使い分けるのには違和感がありました。

東京=上品 大阪=庶民的
こういうイメージで演出したと思いますが、どうなんでしょうね。



その夜、二人で会話中、自我を抑えられなくなった量介がいづみさんにキスしようとすると、いづみさんは手拭いで塞ぎ、「量ちゃん、そんな大人みたいなことしたらアカン」と言います。



いづみさんは、量介を子供扱いしている訳ではなく、再び上京した時には、いづみさんの方が量介の耳をそっと噛みます。

夫の大沢が大学講師を辞めただけではなく、「お便所も無い汚いバーの女」と関係し、更にいづみさんのお金(父親の遺産)を投資に使って失敗します。

この辺は、夫に裏切られた寂しさから、量介を弄んでいる様に見えますが…



井波恵以子(和泉雅子)
量介の母親(小夜福子)が心臓マヒで倒れたところを車がはね、その車に同乗していたのが和泉さん。
それが縁で二人が接近する事になりますが…

山内賢さんと和泉雅子さんはコンビなので、話の結末は初めから分かっていましたが、山内賢さんは最後まで、いづみさんを想っていましたね。
私もいづみさんだけ集中して観ていました(笑)



鉄道シーンはEF58形電気機関車牽引の東海道本線急行



153系急行「なにわ」



佐世保行の急行「西海」のサボ



東京駅を発車する、10系客車急行「西海」のデッキに居るいづみさん。

夫と別れ、九州の高校教師になることが決まりました。
量介と別れる前にいづみさんは言います。「私が一番楽しかったこと何だかわかる? 量介さんと一緒の時よ」



アップになると、OKサインを出したいづみさん。



10系急行「西海」最後尾と見送る二人


あとがき
量介と奈津子の描き方は、一歩間違うと、凄く安っぽい作品になってしまいますが、微妙な所で話が破綻せずに済みました。
それは、いづみさんの力が大きいと思います。
決してひいき目ではなく(笑)


追記
読者さんのリクエストに応えて急行「西海」デッキのいづみさんの表情5枚を載せます