今回紹介する作品は

1961年(昭和36年)新東宝

「胎動期 私たちは天使じゃない」

三輪彰監督



あらすじ
大学附属病院看護学校の優等生 鈴元春子(高須賀夫至子)は卒業式の生徒代表になるが、
読み上げる答辞を破ってしまう。


軍隊さながらの過酷な看護学校の生活を描く、看護婦経験のある十津川光子の原作 新藤兼人監督の脚本の社会派映画です。



この年に新東宝は倒産するのですが、新東宝救済目的で外部の俳優が沢山参加していました。

この映画はメインの俳優が新劇の方々で、新東宝の俳優が脇に回る「新東宝と新劇のコラボ作品」です。






この映画の主役・鈴元春子役の高須賀夫至子


秋田の農村から東京に出てきた、おとなしく秋田弁にコンプレックスがある設定なので
作品終盤まであまり目立ちません。

母親(三宅邦子)も看護婦ですが、秋田の地元では看護婦は卑しい職業と見なされ、春子を世間が好奇な目で見るのが可哀想なので春子を妹として育てました。



看護婦がそんなに蔑まされてるとは




高須賀さんですが、この作品後も映画やテレビでも活躍するのですが、調べても生年月日や経歴が中々分からないのですよ。


以前にある方から「俳優座養成所11期生」だった事は聞いてましたが。


それから池内淳子さんが主役の様な表現が多いですが、高須賀夫至子さんなのでビックリマーク








久米勢津役の広村芳子

活発な性格で看護学校生活の待遇改善を求めたり、病状の恋人(石浜朗)に会いに無断外出したりして主役よりも断然目立ってました。


広村さんは「俳優座養成所8期生」で撮影当時は「劇団新人会」所属

声にインパクトのある方で、その後ラジオドラマのヒロインも担当しました。


映画やテレビにも脇役で出演していまして、作品名は忘れましたが広村さん出演のドラマを観たことがあります。






鹿川真砂子役の山崎左度子

曲がった事が大嫌いな性格の看護学校待遇改善の中心メンバー


山崎さんは広村さんと同期の「俳優座養成所8期生」
この作品のメイン俳優は俳優座養成所出身だった事が分かりました。


因みに俳優座養成所8期生には山崎努さんや水野久美さんがいます。








乙坂花江役の松浦浪路

松浦さんは北沢典子さんに続く新東宝のお姫様女優として活躍しましたが、現代劇にも出演しました。


しかしながらこの役は看護学生の活動を密告する役で松浦さんとしては初めての悪役かもしれません。


山崎さんとのキャットファイトでは窓ガラスが割れかなり迫力がありました。


新境地を見せた松浦さんでしたが、新東宝倒産後、清算会社の「大宝映画」に2本出演した後引退してしまいました。





次は憎まれ役の看護教官


辻敬子役の大塚道子

さながら鬼軍曹です。


この学校では現役看護婦が教官として生徒を教えますが、実は看護婦自身も無断外出は禁止だったり、恋愛も禁止なのです。



大塚さんはその後俳優座代表になりますが、昨年惜しくも亡くなりました。






巻田婦長役の千石規子


相手にネチネチと嫌味を言う何とも嫌味・・いや素晴らしい演技を魅せてくれました。


千石さんは新劇ではなく東宝からの参加です。






石丸看護婦役の三原葉子


素行不良で千石さんによってクビになりストリッパーに転向。


その後「お礼参り」で千石さんにビンタ 「ざまぁみやがれ糞ババァ」と捨て台詞を言って去ります。


全体的に新東宝らしくない作品ですが、新東宝ファンも満足させる要素も盛り込んでます。



これは十津川さんの原作には無いシーンでしょうね。








天知茂が生徒を教える教官としてチョイ出演


チョイ役にせよ天知さんの先生役はこれが最初で最後かもしれませんね。

何故か学生服姿の役はよく見かけましたが。







ラストは広村さんと山崎さんが卒業保留処分になった上に、広村さんの恋人が過労死した為、広村さんは自殺を図る。

遺書には「いま わたしの いちばん恐れることは この世に 生きかえることです」と書かれていました。



高須賀さんは答辞を破り、先輩から教えられた「勉強 無言 服従 」を守り3年間自分だけが良ければいい考えだった事を恥じます。





このラストシーンは今でも私の脳裏から離れません