今日はこの前Twitterでも少しつぶやいた怪我のことから少々。


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 一昨日Mutua(ムトゥア)と呼ばれるカタルーニャサッカー協会の共済組合である医師団が運営する“サッカー選手専門病院”なるものに行って改めて精密検査を受けた。診断結果は「骨に異常もなく、アキレス腱と足首近辺に炎症と過負荷が見受けられる」とのこと。



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このMutua(ムトゥア)。


Catalunya(カタルーニャ)の中心地にあるのですが、これは正直すごいです。


カタルーニャの中心地と言っても、バルセロナにあるわけで、バルセロナ自体小さい街ですので、この病院自体大きいものではありません。「治療院」や「整形外科」と言った方がイメージに近いかも。


でも、そこにはサッカー選手しかいません。


カタルーニャサッカー協会が共済する医師団が運営していますので、当然サッカーに付随して起きる怪我に詳しい知識を持ち合わせています。


すごいのは、保険がかかっていて診断・治療費すべて無料。


ボクは今Segunda Regional(地区2部、上から数えて8部に相当するリーグ)のあるチームに属しているのですが、そこのFicha(登録)証明を持参していけば、すべて後は向こうの病院が手筈を整えてくれます。


イメージとしては、街の中心地にサッカー専門整形外科があって、その街でプレーしていて怪我してしまった選手はみんなそこに送られる。そして診断・治療費すべて無料。


これってすごくないですか?


ボクは昨年も1度ここにお世話になっています。


昨季は途中からPrimera Regional(地区1部、上から数えて7部相当)のあるチームに属していましたので、今より待遇は良かった。クラブ側の、ですね。


怪我してすぐに会長兼監督がこのMutuaにボクの諸データとFicha証明を送ってくれて、日にちもドクターも決まってて、そこに決められた時間に行くと、もう予約が取れてて時間に診断(まぁ予約時間が守られるはずもなくけっこう待った思い出もあるんですが。けっこう混んでたな、思えばあの頃)。


今回はクラブ側に「自分で行って来い」ばりに放り投げられたので、自分でFicha証明だけ携帯していくと、「初診は来て予約を取らないと無理です」と。知らねーよ、時間ないしんじゃ早目に初診の予約してくれよ、という節のことを丁重に頼むと、「それでは今日の午後。来られますか?」 ※注:この会話は途中で相手が気付くまでカタラン語で展開された。



はやっ、と思いながら「お願いします」と即答。


そして一昨日午後診断。レントゲン撮って、精密に検査してもらった。


「うーん、骨に異常はないね。アキレス腱の過負荷と足首に炎症が見られる。ただここではもうできることはないね。リハビリ科に送ってあげるよ」と対応。まぁ可もなく不可もなく無難な対応でした。とにかくこちらとしては骨に異常がなく、正確な診断を受けて、怪我の詳細を知れて一安心。


そして昨日、今日とリハビリに行ってきました。


まぁある物は日本のそれとそれほど大差ありません。電気治療、超音波治療、レーザー治療などです。


しかし、そこにいるのは10~15人前後ですが、全員サッカー選手です。なんか不思議な感じがしました。


どこかのチーム、とかではなくて。この国の、ある地域でサッカーをしている人たちが集まっているだけなんです。でも、まぁ長くリハビリしている人もいるのでしょう、またそこはフランクなスペイン人。その中には連帯感が少なからず生まれており、それはボクの目には間違いなく「1つのチーム」に映りました。


でも、冷静に考えたらすごいですよね?


普通にそこら辺でサッカーしているアマ・ユース・ジュニアユース・ジュニア・女子が同じところに送られてきて、同じところでリハビリする。そしてそこにはチームのような連帯感が生まれている。


「フットボール文化」というチーム。連帯感。


これは自分に大いに刺激になりました。とても感性が震えました。



彼らにとって、単なる「趣味」ではないんですよね。フットボールのコンペティションに参加する、ということは。どんなカテゴリーであれ、そこにはリスペクトがある。そういう「趣味」の人には草サッカーや7人制サッカーの場しか提供されません。ってかそれも十分レベル高かったりするからビビるんすけど。笑



一番自分が感じたこと。


「フットボールに守られてるんだなぁ」ってことでした。


ここの人間は、それが「日常」なんですよね。フットボールに身を投じて、毎回練習行って、毎週試合で“戦って”。そこに意味も理由も存在しません。ただ、そこに“在る”んです。



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自分も来て3年。


最初はチームさえなかった。スペインでのフットボールは草サッカーから始めましたから。


なんとか半年でコンペティションに参戦してる9部(最下層リーグ)のチームに入れてもらって。


給与が発生したり、こういった治療が無料でなされたり。


「自分もフットボールに守られてるんだな」と、強く、強く感じました。


それが自分の中で、良い意味で日常化した気がします。この感覚が、欲しかった。


理由もなく、無条件に“戦える”この感覚が。


当たり前に練習に行って、当たり前に全力を尽くして、当たり前に週末の試合で戦って、結果出して。


この感覚が欲しかった。ずっと、ずっと、欲しかった。


「ってか今オマエ怪我してんジャン」。ナイス突っ込みです。ご名答。しかし、最近リハ、ジム、TR見学、試合見学、チームメイトや監督やフィジコとやり取りしていて思うんです。感じるんです。この感覚を、得たな、と。


スペインの日常に、良い意味で「溶け込めた」な、と。


これがベース。自分の場合、勝負はここからだ、と思っています。「ようやく舞台に立てたな」という感じが近いかな。



スペインでのコンペティションに簡単に入ろうとしたり、そういう発言をする人もいます。現に自分自身も来るときはそう思っていましたし、こんなにも難しいとは思っていなかった。


そう「信じる」ことは大切だと思いますが、そう「思う」ことは勘違いになりかねません。


無論自分は日本でもプロになっていません。そして自分に与えられた現実が万人に襲い掛かるとも思っていません。実際ボクより高いカテゴリーでやってる日本人もいますしね。彼らはすごいと素直に思いますし。


ただ、やりもせずだーだー言うのはボクは「Falta respeto(敬意の欠如)」だと思います。


今日、FIFProのベストイレブンのノミネート発表されました。リーガは最多の18人選出だそうです。続いてプレミア(17)、セリエA(15)、ブンデス(4)、リーグ・アン(1)という内訳です。


世界3大リーグというのはそれだけの世界フットボール界での評価を受け、市場価値がなされているということだと思います。



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そこでの挑戦。ボクのメソッドは周りの人のそれとはおそらくちょっと違います。


なぜなら、現時点でのボクの目標は、「プロ選手になること」ではなく、「プリメーラ・ディビジョンに辿り着くこと」だからです。これは、違うことです。少なくとも、ボクの中では。まぁ「プリメーラに一刻も早く(例えば○年以内に)辿り着いて多くプレーする」という目標に置き換えたいところですが、まだ自身そこまで見えていません、イメージし切れていません。


ただ、もっと現実的で短期の目標は「1つでも上のカテゴリーでプレーする」「行けるところまで行く」ということです。


どちらの目標も、「できる」前提で進むことが肝要だと思います。


「プリメーラまで行く」と信じてする努力でなければ、その努力の質も量もたかが知れたものとなり、その目標達成は遠のくばかりか挑戦そのものの意義さえ剥奪されかねません。自身で奪ってしまうのです。


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「なんでサッカー続けてるの?」


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理由なんて、もうない。


ないんです。


「好きだから」「楽しいから」「自分を(才能たるものを)信じてるから」


そのどれもが正しく、しかし正確に的を得てはいない。



本能の赴くままに、フットボールに向かっていく。


理由が最早思いつきません。


ただ、戦っていく。挑戦していく。


これはフットボールが文化となっているスペイン人たる方法論であり、意識。日常。


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自分もしばらくこの感覚で向かっていこうと思います。その後のことは、その時考えればいい。


今を真剣に、がむしゃらに。やるべきことを、やる。やり続ける。当たり前のことを当たり前に。淡々と。