遅れてしまいましたが、一つの“サッカー観”として読んでいただければ、と思います。


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《“つなぐ”サッカー》


このU-21のスペイン代表は、非常によくパスをつなぐ。ここで言う「パスをつなぐ」ということは、「足元足元にパスがつながって行く」ということだ。日本が目指すサッカー、日本人はおそらく好きなサッカーだと思う。見ていても、非常に“日本的”だと感じた。しかし、そこにはいくつかの違いが見られた。



《タテパスが入る》


ボールを動かす。人が動く。どんどん人がサポートで追い越していく。ダイナミックでアクティブ。見ていても、確かに小気味よいテンポで回るパス回しは、秀逸で目を奪われる。しかし、日本との決定的な違いは、「タテパスが入る」こと。彼らのにとってパス回しは手段でしかない。前に行く意識は日本人のそれとは段違い。DFとDFの間(GAP)に隙あらばボールを入れる。そして注目してほしいのは、ドリブルでそこに入り込んでいくプレー。運んでDFとDFのGAPを突破するイメージ。そのラインを、ドリブルで剥がす。2人のDFは(一時的に)置き去りにされ、無効化される。                                       



《停滞するサッカー》


見かけは綺麗で美しい。しかし、僕はこのサッカーを“停滞するサッカー”であると分析する。それには原因が2つある。1つはCBの球出しで、もう1つはスペースへの飛び出しの欠如だ。         


つまり、CBの球出しが足元-足元へのつなぎに終始してまうことは、ゲームのリズムをチェンジできないことにつながる。現代サッカーでは、CBの球出しが大きな役割を担っている。それはなぜか?なぜなら、CBというのは唯一常に前向きでプレーできるポジションだからだ。                                 


少し前までは、ボランチがゲームのオーガナイズをすべて担っていた。ゲームのリズムチェンジも自ずと彼らが行っていた。例えば、SBから良い位置で、良い体の向きでボールを受け、ターンし、逆サイドに展開する。これが典型的なサイドチェンジで、これによりDFが食い付いていた逆のサイドはオープンスペースが広がっており、ここで一気にタテにスピードアップする、というのが一般的なリズムチェンジの一つの方法であった。        


しかし、現代サッカーではそれでは遅いのだ。それではスピードアップできない。そのスペースがなくなるような守備体型を敷くのがモダンな守備方式なのだ。よって、現代サッカーではCBが“飛ばす”パスを出すことが重要になる。つまり、前までボランチを経由していたところを、すっ飛ばす。


スペインのサッカーで言うと、左CBから右WG(SH)にロングフィードが通るとゲームのリズムがチェンジする(右CBから左WGも同様)。優秀な選手であればあるほどこれが蹴れるし、優秀なチームであればあるほど、この回数が多い。


これがないと、ゲームが停滞してきてしまう。そして、このU-21スペイン代表が陥っているのは、まさにこの問題である。



つづく