結果は1-0。


今日はサッカー的な分析を少々。



≪ポゼッション≫

この日のスペインのボール保持率は


前半61%


後半49%


後半のボール保持率が落ちたのは押し込んでくるドイツに対しカウンターを喰らわすため。もちろんドイツが人数をかけてスペイン陣地に入っていたためボールは持たれゴール前に放り込まれ失点の危険性は孕んでいたが、それでもペドロの決定的なシーンもあり、ジャックナイフをチラつかせながらのボール保持率の低下だったと言える。


合計のパス本数は684本にも上り、そのうち何とパスミスはたったの14%(97本)。この数字からもいかにスペインがボールを保持し、試合をコントロールしていたかがわかる。


攻撃のタクトを振るったチャビに関しては、115回のプレー機会で、ボールを失ったのは僅かに6回という恐ろしい数字を叩き出している。



≪試合をコントロール≫

「スペインがボールを保持し、試合をコントロール」と何げなく上記したが、基本的にボール保持率と試合のコントロールとは別問題である。つまり、ボールを保持しているからと言って、試合を支配しているわけではない、ということ。


しかし、この日のスペインに関して言えば、明らかに試合をコントロールしていた。


ドイツのカウンターに対する対策は完璧だったし、ボール保持から攻撃に行くタイミング、リスク回避も素晴らしかった。


ボールを保持しながらも、カウンターを警戒し、攻撃を組み立てる。


特に前半、スペインのボール保持の意味は、「ゴールを奪うこと」ではなく、「失点しないこと」であった。そこに、意味がある。


この意味におけるボール保持率が、いかに試合をコントロールしたかを物語る。そう、61%のボール保持率と失点0。



≪カウンター対策≫

スペインはドイツのカウンターを警戒していた。


そのため、守備の際に相手CBにビジャ、チャビがプレスをかける。


肝要だったのは、「タテを切る」位置取り。


特にチャビはトップ下での先発。自分の持ち場を離れ、相手CBにプレスに行くわけだから、多少のリスクを背負っている。そこで、CBの前に立ち、「タテ」を切ることによって、ロングボールと相手ボランチへのパスを寸断。そこからSBにパスが渡り、ボランチにパスが入るのは最悪OKだという考え方だ。


これによりドイツはボールの出所を寸断された。シュバインシュタイガーにボールが渡った頃には、スペインの守備陣は整っており、サイドに展開するしか選択肢はない。ポドルスキとトロコウスキは独力での突破とシュートしか選択肢はなく、クローゼとエジルは前線で完全に孤立。


それにしても、ドイツは遅攻では何もできなかった。


今までは「攻撃的」だの「大量得点での勝利」だの今大会はド派手な肩書を背負っていたが、こうまでも無力化されてしまうものなのか。


今大会これまでのドイツのキーワードは「早い時間帯での先制点」「組織的な守備」、それと「ボールを追い越すサポート」。


そういった意味では、得点能力のあるミューラーがいないのは痛かったのかもしれないが、それがW杯。総合力の勝負。スペインだってトーレスとセスクが本調子でないだけでけっこう痛手ですし。


そう、僕は今大会のドイツが決して「攻撃的」だったとは思いません。


その本質は組織的な守備と効果的なカウンター、それにおける運動量とスピードにあったのではないでしょうか。それに加えエジルやミューラーといった若きタレントがスター候補生としてブレイクした。



≪“点の取れる”ポゼッションサッカー≫

この日のスペインの得点はコーナーキックからのプジョルのヘディング。


「崩して取った得点」という意味では、ポルトガル戦やパラグアイ戦の方が美しかったかも知れません。


しかし、今のスペインの強さはこういった試合でも“点が取れる”ことに強みがあります。

ボールを思うように保持し、自在に動かし、創造通りに得点を奪えればそれは理想のフットボールです。けれども、現実はそれを阻止しようと相手も徹底して潰しに来るので、いつもいつもそのような美しい勝利が訪れるとは限りません。

だけれども、その“美しさ”に固執することなく、この日のプジョルのゴールのように身を投げ打つような泥臭いゴールで勝利をものにすることができる現在のスペイン代表。遮二無二勝利に執着する“無敵艦隊”。これこそが、今のスペインの最も怖ろしい“強さ”なのかもしれません。