前々回の「プレスの“厳しさ”の違い(http://ameblo.jp/barcelonanosyasou/entry-10545829938.html )」の続きを。
1対1とかではなく守備の狙い所を知っている。
これは、個々人が局面局面の球際に関してきつくボールを奪う意識が強いことを意味しています。
これについては、以前オランダのユトレヒトでプレーしていた藤田俊哉選手が興味深いコメントをしていたので引用させてもらいます。
「海外の選手というのは、ボールに対して当たりに行く、チャレンジしに行く意識というのが非常に強い。ボールに喰いつくというか。それに対し、日本の選手は、こう、何ていうのかな。“待つ”イメージ、ディレイして連動して奪う感じなんだけど、海外の選手は隙あらば一人で奪っちゃうんだよね。その辺の(海外でやっている)中田(英)とかと国内でやっている選手との間のGAPみたいなのはあったかもね」
これは海外組と国内組の違いについて意見を求められた時の藤田選手のコメントなのですが、これは非常に本質を突いています。
そう、こちらの選手は“隙あらば一人で奪ってしまう”のです。そこに1対1も守備の連動も戦術もありません。
日本人というのは、えてして「守備戦術でブロックを作ろう」と決めたらそれしかできなくなってしまいます。そこにルーズボールが来そうな予感がしても、自分のポジションにつくことを優先してしまうのです。そして、この行為こそが僕はフットボールの本質から離れて行ってしまう要因になっている気がしてなりません。
だから、「待って」しまう。球際で、「行けない」選手と見られてしまう。
この前長谷部選手に関して少し述べさせてもらいましたが、海外でやっている選手というのは、感覚的にそこに行けるようになります。というか、そこで行けなければ試合に使われませんし、相手が強ければ強いほどそこで行けないことが致命的になってやられてしまいます。
例えば僕はこちらでときたま日本人とフットサルをやると、プレスに行くタイミングをけっこう口うるさく言われます。
僕は、わざとパスコースを空けて出させて狙ってインターセプト、というのをよくやります。
網を張って、餌をチラつかせ、一気にボールを奪うのです。その駆け引きなんです。そこでの駆け引きを放棄したら、相手は容易にボールを保持し、主導権を握ります。
インターセプトに行った結果、身体が入れ替わって前を向かれて剥がされても、そこで行かないでキープされるよりはマシなんです。
それを怖がって「行く」ことを拒絶すると、海外の選手というのは調子に乗ってガンガン前に押し込んできます。それを抑圧するために、前で狙うのです。「こっちは前で狙っているよ」と。インターセプトを前ですれば、その瞬間相手の1stDFを剥がしたことになるので、一石二鳥の効果です。
そのチャンスをビビって逃し、入れ替わるリスクに負けてはなりません。そこは冒すべきリスクです。
だから、海外の選手の方が、「一発で行ってかわされる」みたいなシーンが多いと、僕は思います。イタリア代表のガットゥーゾとか、けっこう中盤で一発でいってかわされるシーンもありますから。その後普通にファウルで止めちゃえるところがイタリア・サッカーではありますが(笑)
なので、おそらく海外のDFはカバー&チャレンジを徹底しているというのよりかは、一人がガッツリボールを奪いに行く。必死でかわした相手に、またもう一人が勢いよくボールを奪いに行く。そのうちに最初にかわされた選手が戻っている。つまり、DFが次から次へと出てくるイメージではないでしょうか。
海外でやっていて、戦術や理論が特別優れているかというと、正直そんなことはないですよ。「日本の方が進んでいるんじゃねぇの?」とか思うこともあるくらいですから。
チャレンジ&カバー一つとっても、そんなに細かく徹底してやっている所の方が少数です。プロの試合見ても。それよりそこは適当に流しても、本質的に抑えてフットボールに取り組んでいれば、結果には近付いていくことを、彼らは本能的に知っています。
「プレスの“厳しさ”の違い」。それ一つとっても、フットボールは理屈ではない部分が多い現実に気付かされます。そして、その本当の本質的な差を感じて埋めていく努力こそが今、日本に必要な気がしてなりません。