≪不安要素:後半終盤≫
昨年0-3で完敗を喫したオランダ戦。善戦しながらも1-2と最後に根負けした今回のイングランド戦。
強豪国相手に後半の終盤に失点を喫する戦いにはいささか不安を覚えます。
「代表レベルでも駆け引きの下手さが如実に顕われてしまうのか」
と危惧してしまいます。
前回のW杯の初戦のオーストラリア戦の悪夢が頭を過ぎります。
―分析・考察―
その要因は二つ。
① 試合におけるペース配分、「試合を支配すること」の意味
② ラインが下がる現象、その原因
① に関しては、これは明らかに日本がペース配分の下手なチームだということと、「試合を支配する」という意味をうまく捉えられていないことに原因があるように思います。
無論、あのペースで行って、初めてオランダやイングランドと言った強豪国と僅差のゲームを展開できるのかもしれません。現場レベルの感覚は、実際僕にはわかりません。
しかし、あのやり方でやれば、確実に強豪国は仕留められてしまうでしょう。なぜなら、試合を相手に支配させることを容認しなければならないやり方だからです。そしてそれは現実的には仕方のないことだと僕も思います。現時点、日本と強豪国の間にはそれだけの差があると僕も考えるからです。そしてそれを認めてあの戦い方を選択するならば、僕はそれは「アリ」だと思います。
それが現在の日本の実力と言われればそれまでですし、正直それが現実だと僕は感じています。あれよりも得策があるかと聞かれれば、僕にも答えは見つかりませんし、あれが最善策なのかもしれません。
では、W杯第2戦のオランダ戦は思い切って捨てて、サブ選手主体で行くのもアリかもしれません。なぜなら、あのサッカーでは、短期間で3試合をフルにパフォーマンスを発揮するのは非常に難しいと僕は思うからです。
② に関して。
ゲーム終盤、解説を務めていた元日本代表の福西さんは幾度かこう言いました。
「DFラインが下がりすぎていますね。気をつけなければなりません」
さすが日本代表としてW杯を2度経験している選手です。適確なゲーム分析です。確かにラインが下がっているし、それにより生まれたスペースを相手に使われ日本は何度となくピンチを迎えている。
おそらく選手もわかっていると思うし、コミュニケーションをとっていると思うんです。
「ラインを上げろ」と。
でも、現実的にはそれができない。
その原因は、“疲労”と“目に見えないプレッシャー”です。
“疲労”はとてもわかりやすい原因ですよね。前半から激しくプレスに行く結果、後半の終盤にラインをアップする体力が残っていない。そのスピードが落ちる。その間に波状攻撃を受けてしまう。イコール「ラインが下がる」。
“目に見えないプレッシャー”。世界の強豪国と戦う時に最も怖いのはここです。
世界の選手と言うのは、一概にして常に相手DFの一番嫌なことを狙っています。
=ウラを狙うこと=
これが90分繰り返されると、DFは意識的に怖くなってラインを上げられません。そこにルーニーのような強烈な選手がいれば尚更です。
ランパードやジェラードのミドルシュートよりも、ライト=フィリップスのサイド突破よりも、一番怖いのはルーニーにウラをとられること。
理屈ではなく、ピッチレベルで選手が感じる現実ではないでしょうか。
その結果、ラインを上げられない。
すると、ランパードやジェラードはお構いなしにミドルを狙う。しまいにはルーニーまで。GK川島がファインセーブで防ぐ。息をつく暇もなく、ジョー・コールとアシュリー・コールが両サイドから襲いかかる。気付けばラインは下がり、ボールに触れればそれは即オウンゴールの危険性を孕む配置に無意識に追い込まれている。
これがイングランド戦の後半にピッチ上で起きた現象ではないでしょうか。
理屈ではなく、頭で理解していても体がそれを拒む。
しかし、これは世界の強豪国と戦う上では認識しなければならない問題だし、解決しなければならない問題です。
この問題に関し、日本代表が本番までにどういった対応を見せるのか、僕が注目しているポイントの一つです。
日本代表がどんな解を導き、どのような戦い方を見せるのか。W杯が楽しみです。