≪試合を支配するということ≫
「ボールを持っているなら試合を支配できる。
だが、ボールを持っていなくても試合を支配することができる。
それがフットボールだ」
―ヨハン・クライフ
バルセロナに来て、やはりこの人の影響を少なからず受けてしまうのですが、クライフは上記のような言葉を残しています。
この試合。前半の時点でのボールポゼッション率は
セビージャ43% A・マドリー57%
スコアは前半終了時点で1-0でセビージャがリード。
しかし、やることが明確化されていたセビージャは、試合をコントロールしながら1点のリードを守り、試合を優勢に進めます。
≪“試合を壊す”ファウル≫
「プロフェッショナル・ファウル」。こんな言葉を聞いたことがあるでしょうか。
“ファウル”は、フットボールにおいて、一つのテクニックだと僕は思います。
バスケやアメフトと同じです。スポーツにおいて、ルールが存在するということは、そのルールは密接に戦術・戦略とリンクしてきます。
セビージャは、アトレチコの前線の4枚、アグエロ、フォルラン、シモン、レジェスにボールが入るぞ、というときはファウル覚悟でガッツリ潰しに行っていました。
「この4人に悠々と前を向かれてプレーされるくらいなら、ファウルして試合を止めて形を整えてセットプレーで跳ね返そう」
これがセビージャの守備のコンセプトでした。
特に⑩アグエロ、⑦フォルランにタテパスが入った時のセビージャの⑧ゾッコラのプレスバック(挟み込み)が尋常じゃないくらい速い。
また、アトレチコが中盤で横にボールを動かしながらサイドを変えようとするときの“中央を経由する”瞬間をかなり狙っていました。⑤チアゴ、⑫アスンソンのところですね。
≪ナバス対策≫
アトレチコの方は、“ナバス対策”をかなり考えていたと思います。
最初の2本くらいはやられていた場面もありましたが、そこからは修正。
「ナバスを中に行かせる」
「ナバスに対し、常にボランチかCBが監視し、カバーリングして1対2にする」
を徹底しましたね。
ここで興味深かったのが、アトレチコの左SB、A・ロペスの対応。
普通スピードのある選手に対してはボールを持たれたら距離を取ろうとしますが、彼の対応は真逆。
ガッツリボールに行って、
“ボールとがっぷりよっつで奪う”
Or
“かわされても前に大きく出させることで、CBのカバーで味方に対応させ、自分は再びカバーのポジションに入る”
を徹底したことで、ナバスも嫌がっていました。
≪“自分たちのフットボール”を捨てたセビージャ≫
セビージャは後半、自分たちのフットボールを捨てた戦い方を選択し、それを徹底しました。
右のナバス、左のカペルを基点にしたサイド攻撃を試みなくなりました。
それでは、ポイントは、どこに?
トップの⑫カヌーテです。
もうそこに長いボール。徹底的に。それをカヌーテがキープor競ったこぼれ球を拾ってボールキープ。
≪セビージャの考えた“ボールをどこで失うか”≫
1点リードのセビージャは、“ボールをどこで失うか”を考えていました。
“ボールをどこで失うか”=“相手がどこから攻撃を始めるか”
=“どこから守備をするか”
セビージャのポイントは、トップのカヌーテ。
では、前線でボールを失うことになります。
ということは、相手がボールを奪うのはDFライン、もしくはプレスバックしてきたボランチですね。
なのでセビージャは、そこから守備を始めればいい。
これによりセビージャのDFラインは比較的にシンプルに守備を行えていました。ラインコントロール、相手の2トップに対するマーク、受け渡し。
失うポイントが明確だから、守備に専念できたかな、と。
≪結果≫
後半の終盤、アトレチコが前がかりになりパワープレーに出たところを「待ってました」と言わんばかりにナバスがカウンターを喰らわして2-0にし、勝負あり。
2-0でセビージャが優勝を飾りました。