≪“3-4-3”の意図≫


ペップは3-4-3を敷いてきた。


DF:トゥーレ、ピケ、ミリート


MF:右アウベス、ボランチブスケッツ、左ケイタ、トップ下チャビ


FW:メッシ、イブラ、ペドロ



僕の解釈では、ペップは“数”で押し込みたかったんだと思う。

つまり、ゴール前に8枚のインテル守備陣が陣取っているところに、人数をかけることによってマークをずらすこととスペースを空けることを狙ったのだ。と。


インテルDFはゾーンで守るため、自分のゾーンに入ってくるバルサ選手をマークするDF方法。


布陣としては、第一戦と同じく4-4-2。


DF:マイコン、ルシオ、サムエル、ザネッティ


MF:3ボランチモッタ、カンビアッソ、キブ、トップ下スナイデル


FW:エトー、ミリート




バルサの方は、これに対しバルサの選手が各ゾーンに2,3人と入ってくる。それに対応し目が動いている隙にスペースを確保してしまおう、という考え方だ。


また、3バックにボールを運べる3人を起用したことで、その3人も攻撃時には積極的にドリブルでインテル陣地に入ってくる。こうして数的優位を作るバルサではあったが、インテルDFはこのようなバルサの動きをすべて「捨てた」。


ドリブルで入ってこようが、誰かがサポートに来て自分のゾーンで1対2になろうが、関係ない。インテルの目的はたったの二つだ。


・バイタルエリアへの侵入を許さないこと

・メッシとチャビをバイタルエリアでフリーにしないこと


あとは、すべて攻撃を跳ね返し、アウベスの裏に走り基点となるミリートにつなぎ、カウンターorキープ。



バルサはサイドにワイドに展開しながらボールを回し、インテルDFを横に揺さぶりスライドさせ、体力を消耗させる“ボディ・ブロー”を打ち続ける。




この試合で興味深かったのは、インテルの右SB、マイコンの1対1時の対応だ。


バルサの左WGはペドロ。リーガでも、中にドリブルで切り込み強烈な右足ミドルを豪快に叩き込む得点も奪っている。しかし、相手DFが固められた状態で左サイドをワイドに開いてタテに突破しての左足のクロスでアシストしたシーンは極めて少ない。


データとペドロの特徴を見れば、中を警戒しタテにドリブルさせ、センタリングを上げさせて中央でCBが跳ね返す手法をとりそうなものだが(実際去年チェルシーはこの守備方法だった)、マイコンは徹底してペドロの“タテ”を切り続けた。


中に行かせ、シュートを打たせるorワン・ツーを狙わせる。


タテに突破されて深い位置からのクロスは絶対させたくない。


逆にバルサは、ペドロのポイントで徹底的にそれを狙ってもおもしろかったのかな、と。


右サイド、アウベスはアーリークロスに終始しましたからね。




前半27分にモッタの退場で10人になったインテルでしたが、その後もやり方は変えず。


前線に一人スナイデルを置き、エトーを右MF、ミリートを左MFに下げ、中盤をキブとカンビアッソとともに形成。


4-4-1でバルサの3-4-3に対抗しました。




≪バルサに必要だったもの≫


バルサは、もっと“つっかけていくドリブル”を必要としていた。


サイドに揺さぶっているだけでは、インテルDFの疲労はそう蓄積しない。


もっと「恐怖心」を揺さぶる何かが必要だ。


PA付近のゾーンに侵入しようとする以外のドリブルなど、放っておけばいい。


インテルは、8人で形成されたMFラインとDFラインのGAPに誰かが侵入してくることが嫌なのだ。


そこにポジショニングとパスで侵入しようとするなら、予測して前に出てボールを弾いてすぐにまた自分のポジションに戻ればいい。


しかし、ドリブルで侵入されたら、1枚が対応に出なければならない。すると、そのスペースが一瞬空く。ゾーンで守っているため、誰かがカバーに行くことは難しい。そこにバルサの選手が走り込めば、ビッグチャンス。そこにインテルDFがマークに行けば、他が空く。そうして、後手後手になる。


だからインテルは、そこを剥がされそうになったら、すかさずファウルで止めていた。そこでのFKの方がその空いたスペースを狙われるよりよっぽどマシなわけだ。




≪残り15分のゲーム展開≫


ああいったフットボールの試合展開には、お互い我慢が必要だ。


バルサは風穴を空けるよう見据えながらじっくり、しかし速くボールを動かさなければならない。


インテルは一瞬の隙も見せずにひたすらバルサの攻撃を跳ね返さなければならない。


ゲームが動くのは、前半のうちか、最後の残り15分だと、僕は踏んでいた。


前半はモッタの退場もあり、有利になったようにみえたが、逆にインテルに集中力を与えてしまった。


ハーフタイム後に戦術を確認してきたインテルは、後半さらに徹底した守備を披露した。



「後半残り15分で2点取る根性がなかったら、この試合は厳しいぞ」


先制点が生まれたのは84分。ピケを前線に投入してのパワープレーの成果。残りはロスタイムを入れても10分少々だった。


ゲームは確かに、フットボールの要素をふんだんに含蓄しつつあった。


クライマックスに向かい、誰もが世界最高のフットボールを展開する両チームに興奮した。


しかし、バルサは届かなかった。


いや、インテルが素晴らしかったのだ。



バルサに思うようにフットボールをさせず「ボールを回させた」インテル。見事に試合を“打ち壊した”。




決勝はインテル対バイエルン・M。


この試合以上の、世界最高のフットボールが展開されることを期待する。