さて、前回の続きです。

②試合を壊せる選手たち

に関してですが、どういうことかと言いますと・・・

この試合、ホームのバルサはトップチームと同じく“ポゼッション・サッカー”で試合を支配しました。

こういった展開で、スペイン人というのは、非常にリアクションがうまい。とりわけ、そこは能力の高い選手が揃っているエスパニョール・ユース。

簡単に言うと、“バルサにバルサのサッカーをさせないサッカー”をしようとします。

それが、“試合を壊す”という意味です。

例えば、前回言ったように、バルサはワイドな展開とロッチーナという素晴らしいFWの引き出しで試合を創っていました。

そこで、エスパニョールは、ワイドに展開させるパスとロッチーナへのパスを寸断。FWのプレスの位置を下げ、3つのラインをコンパクトに保ち、横のGAPもタテのGAPも狭くすることでパスを通させにくくします。

ロッチーナも、引いて受けてもすぐにエスパニョールDFとMFの挟み込みにあうため、スペースがなくなり徐々に自由を失っていきました。

こうしてバルサは攻め手をなくして戸惑い、自分たちのサッカーはできなくなっていきます。それこそエスパニョールの思う壺でした。

バルサが自分たちのサッカーができなくなっていくと、バルサはゲームのペースをつかめなくなっていきます。自分たちのリズムを失ってしまいました。

この時点で、エスパニョールはその時点での“試合を壊す”ことに成功しています。


よく囁かれる「自分たちのサッカーをする」という概念。それは決して間違った考え方ではないと思いますが、“相手あって”のサッカーであることを強く自覚しなければなりません。

では、エスパニョールユースがホームでこういった守備に重点を置いた戦い方をするかと言えば、

しません

しっかりとボールをポゼッションして、試合を支配して決定づけるサッカーを、彼らは展開します。

つまり、「自分たちのサッカー」もできるし、それと同時に「それを崩して試合を壊すサッカー」もできる。それが、一般的には日本人にないもの、足りないものなのだと僕は感じています。

スペイン人は、それができる選手が非常に多い。

試合を肌で感じることができる。

それは、確かに一つの側面では、よく言われる「試合経験のなさ」が強く影響していると思います。“リーグ戦がないこと”。それは本当に日本のサッカーの前進を妨げている要因の一つです。

ただ、僕は個人的にそこだけに原因を起因したくない。

これは、学べることだと、個人的には思うんですよ。

その中の一つの方法として、「試合をたくさん観る」。

それも、世界のトップレベルの試合、ハイレベルな試合です。申し訳ありませんが、Jリーグで“凡戦”と言われてしまうような試合では、効果は半減してしまいます。


試合の中での駆け引きとか、状況判断とか。「学べる」し、「教えられる」ことだと、僕は思うんです。それを、環境のせいにだけにしてしまうのは、あまりにも横暴なのではないか、と。なぜなら、現実に今、その環境は存在しないからです。

ここで誤解してほしくないのは、リーグ戦導入に反対しているわけではないのです。リーグ戦導入大賛成です。日本サッカーが強くなるために、必要不可欠な要素だと、強く思います。だって僕個人、もっと幼い頃から「試合を通して戦う」ことを試合を通じて学べていたら、今頃もっと良い選手になっていたかもな、なんて夢想することがないでもないですから(苦笑)

ただ、そういった声に賛成しながらも、僕は違う切り口から解を求めようと。成功する方法は一つじゃないはずですから。

現有戦力でやるしかない。

今、手持ちの駒、環境で戦うしかないじゃないか、と。その上で、環境整備も同時進行しようではないか、と。

そうでなければ、刻一刻と進み続ける、この「サッカー先進国」のスピードに、とてもじゃないけど追いつけないですよ。


P.S.
“試合を壊す”ことについて語り出すと、次は“試合ではポイントを作らなければならない”という話になるのですが、それはまた今度にすることにします。